研究課題/領域番号 |
18H00966
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
本多 裕司 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (40399382)
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研究分担者 |
奥西 智哉 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (20353964)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グルテンフリー / 米粉パン / プロテアーゼ |
研究実績の概要 |
これまでの米粉パン研究は、主に米粉粉砕研究あるいは小麦粉とのミックス粉を用いたパン研究が多い。数少ないグルテンフリー米粉パンの知見でも、主成分である澱粉に関する研究ばかりであり、米タンパク質に注目した研究は皆無であった。本研究では、タンパク質分解酵素であるプロテアーゼで処理した米タンパク質がグルテンフリー米粉パンの品質を改善する作用機序について、米粉バッターのタンパク質科学とレオロジー特性から解明する事を目的とした。 プロテアーゼ処理した米粉バッターは、粘性に大きな変化が生じている事が分かってきた。本研究では、プロテアーゼ処理をした米タンパク質分解物をグルテンフリー米粉バッターに添加して、米粉バッターの貯蔵弾性率や損失弾性率などのレオロジー特性について比較し解析する。さらに、米粉パンバッターの発酵から焼成に至るレオロジー特性を詳細に解明するために、温度可変が可能な粘弾性測定装置を用いて分析する。 今年度は米粉からタンパク質を抽出する方法を改善することを試みた。また、あらかじめタンパク質分解酵素であるプロテアーゼを作用させた米粉からタンパク質を分離して、分離したタンパク質とグルテンフリー米粉パンの比容積増大との関係についても検討した。 以上の分析で得られるグルテンフリー米粉バッターのレオロジー特性に関するデータと製パン性の相関性を明らかにすることで、製パン性に関する米タンパク質分解物の役割について解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの申請者らの研究によって、グルテリンがプロテアーゼによって分解されると、グルテンフリー米粉パンの食感などの性質が大きく改善されることが分かってきた。今年度は米タンパク質の抽出法を再検討するとともに、プロテアーゼによる米タンパク質分解物を米澱粉に添加したグルテンフリーパンを調製する事で、製パンにおける米タンパク質の役割について検討した。 これまでに米粉からタンパク質を大量に調製するためには、等電点沈澱による回収法を採用していた。しかし、得られたタンパク質を米澱粉に添加して調製したグルテンフリーパンは大きな比容積増大効果がみられなかったため、今年度は新たに硫安沈澱を利用してタンパク質を調製した。硫安沈澱によって回収されたタンパク質を米澱粉に添加して調製したグルテンフリーパンは、等電点沈澱によって回収されたタンパク質と比較して増大することがわかった。 次に得られた米タンパク質を製パン性が良好であったプロテアーゼに作用させてから分解物を回収し、米澱粉に米タンパク質分解物を添加したグルテンフリーパンを小スケールで調製した。その結果、米タンパク質分解物を米澱粉に添加したグルテンフリー米粉パンの比容積が増大する傾向が見られた。また、単位面積当たりのクラムの発泡数を比較してみると、米タンパク質分解物を米澱粉に添加したグルテンフリー米粉パンの方が細かい気泡を有していることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は米タンパク質分解物を大量に調製し、ホームベーカリー等でグルテンフリーパンを調製する事を試みる。次に、製パン性が良好であったプロテアーゼ分解物をSDSポリアクリルアミド電気泳動で分析し、米タンパク質分解物を回収する。その回収物を質量分析などによってアミノ酸配列を同定し、米タンパク質分解物がどの領域が残存しているのかを決定する。以上の分析を通して、どのタンパク質がグルテンフリー米粉パンの製パン性に寄与しているのか解明する。 プロテアーゼ処理した米粉バッターは、粘性に大きな変化が生じている事も分かってきた。プロテアーゼ処理をした米タンパク質分解物を米澱粉で調製したバッターに添加して、米澱粉バッターの貯蔵弾性率や損失弾性率などのレオロジー特性について比較解析する。さらに、米粉あるいは米澱粉パンバッターの発酵から焼成に至るレオロジー特性を詳細に解明するために、温度可変が可能なレオメーターを用いて分析する。 以上の分析で得られる米粉バッターのレオロジー特性に関するデータと製パン性の相関性を明らかにすることで、製パン性に関する米タンパク質分解物の役割について解明する。
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