これまでの米粉パン研究は、主に米粉粉砕研究あるいは小麦粉とのミックス粉を用いたパン研究が多い。数少ないグルテンフリー米粉パンの知見でも、主成分である澱粉に関する研究ばかりであり、米タンパク質に注目した研究は皆無であった。本研究では、タンパク質分解酵素であるプロテアーゼで処理した米タンパク質がグルテンフリー米粉パンの品質を改善する作用機序について、米粉バッターのタンパク質科学とレオロジー特性から解明する事を目的とした。 今年度は、プロテアーゼ処理した米タンパク質分解物がグルテンフリー米粉パンの品質を改善する作用機序について、米粉バッターのタンパク質科学とレオロジー特性から検証した。また、これまでの研究によって、プロテアーゼによって生成された米タンパク質分解物中のシステイン中のチオール基がジスルフィド結合を形成することで澱粉の周辺で網目構造が形成され、生地の気泡保持力が増加する可能性も検証されてきた。本研究では、さらにプロテアーゼ処理した米タンパク質分解物中のジスルフィド結合の有無を調べる事で、プロテアーゼによる米タンパク質分解物と比容積の関係を解明することを試みた。プロテアーゼ処理したグルテンフリー米粉パン生地に含まれているタンパク質に対してシステインに特異的な蛍光ラベルする事によって、タンパク質に存在するジスルフィド結合の有無を検討した。この研究から、発酵によって発生した気泡を保持する能力に寄与している可能性が高い米タンパク質分解物とその由来となる米タンパク質を同定した。
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