研究課題/領域番号 |
18H00973
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
羽田 貴史 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 名誉教授 (90125790)
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研究分担者 |
宮田 由紀夫 関西学院大学, 国際学部, 教授 (20278584)
松田 浩 成城大学, 法学部, 教授 (20364812)
杉本 和弘 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (30397921)
船勢 肇 長崎女子短期大学, その他部局等, 助教 (60594059)
長谷部 圭彦 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (60755924)
藤井 基貴 静岡大学, 教育学部, 准教授 (80512532)
栗島 智明 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (90846453)
堀口 悟郎 九州産業大学, 地域共創学部, 准教授 (40755807)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 学問の自由 / 大学自治 / 憲法体制 / 科学の社会的責任 / 専門的自由 |
研究実績の概要 |
1.第4回研究会を10月16日に開催し、「アメリカにおける学問の自由の受容と制度化」(松田)、「アメリカの大学における国家安全保障と学問の自由」(宮田)、」「フランスの大学における全構成員自治と教員の独立」(堀口)、「戦前日本における学問の自由の受容と制度化」(羽田・船津)、「学問の自由の生成と制度化」(栗島・藤井)、「大学の企業的経営と学問の自由」(栗島)の報告をもとに検討を行った。第5回研究会を1月13日に開催し、「現代社会における学問の自由の生成と動態」(羽田)、「戦後日本における学問の自由解釈の変遷」(栗島)、「国境を越えた学問の自由規範の生成」(栗島)の報告を行い、検討した。 2.また、Terence Karranらによるヨーロッパの大学における学問の自由調査Survey on Academic Freedomの翻訳、Terence Karran & Lucy Mallinson, 2017, Report for the University and College Union; Academic Freedom in the U.K.: Legal and Normative Protection in a Comparative Context, Revised 7thの翻訳を行い、ヨーロッパにおける学問の自由動態についての状況を把握した。香港の学生運動としてブルース・マクファーレンに寄稿いただき、翻訳した。 3.研究資料として、大学自治・学問の自由に関する日本語図書・文献59冊、英語文献73冊、合計132冊を購入し、研究グループの利用に供した。特に従来知られていなかったパレスチナ、フィリピン、エチオピアにおける学問の自由に関する文献を入手した。 4.堀口「学生の参加と教授の独立」『比較憲法学研究』30号の発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、①各国の学問の自由保障の構造と形成過程を明らかにすること,および学問の自由研究に関する研究動向と理論的課題を発信すること、②内容構成は,国際動向や国民国家の形成と大学の制度化による学問の自由の形成を中心とした国別と学問の自由の変動に関するテーマ別とすること、③各国の構造は,近年,類書がないことに鑑み,関連分野の研究者(大学院生含む)や大学人に対する啓蒙的視点も入れたテキスト的記述(基礎的な事実と参照文献)も意識すること、項目としては、学問の自由の定義と性格(権利性,専門職としての研究者の権利との関係,市民的権利との関係)、内容・領域(研究,教育,社会的発言など)、主体(教員、学生、機関など)、保障の法令的根拠・形態(憲法,制定法,判例,大学内立法,慣習法,労働協約)、大学自治の位置づけ、生成過程(歴史)、学問の自由に対する危機(外部の要因:人事制度・政策(Non-tenure),資源配分(補助金),アセスメント(ランキングなど),安全保障,産学連携,ナショナリズム,治安(テロ対策),内部の要因:企業的運営,学生消費者主義,Political correctness)を明らかにすべき検討課題とした。これをふまえて、基本的な文献の収集が進み、文献に基づいてグローバルな学問の自由をめぐる動態と規範化、ドイツ、フランス、イギリス、日本、アメリカ、香港についての研究を進め、原稿化が進展していること、すでにグループメンバーによって発表が行われていることなど、おおむね順調に進展していると考えられる。なお、イスラム圏及び中国における学問の自由についても対象にしていたが、近年、学問の自由に関する状況が緊張し、研究者の協力等が困難になっており、この点が課題である。
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今後の研究の推進方策 |
1.2020年度は最終年度であるが COVIDー19のために調査・研究会等の活動が制約されている状況にある。ZOOM会議等により研究会を3回開催し、研究成果の交流と検討を図る。 2.外国からの研究者招聘が難しいため、国内において日本の学問の自由をめぐる問題についての研究集会を開催する。 3.研究成果をもとにした出版を進める。内容は、「現代社会における学問の自由の生成と動態」(羽田)19世紀ドイツからの近代大学モデルの普及の一環として学問の自由概念をとらえ,大陸法やコモンローなどによる保証形態の概略と20世紀末からの動揺を,国際規範の形成と合わせて論じる。2)「アメリカにおける学問の自由の生成と動態」(松田) 3)「ヨーロッパにおける学問の自由の生成と動態」(栗島・藤井)4)「ドイツにおける学問の自由の生成と動態」(藤井・栗島)5)「フランスにおける学問の自由の生成と動態」(堀口悟郎・九州産業大学)6)「日本における学問の自由の生成と動態」(船勢・羽田)7)「イギリスにおける学問の自由の生成と動態」(杉本)8)「アメリカにおける国家安全保障面での言論の自由」(宮田)9)「大学の企業的経営と学問の自由」(栗島)からなる想定である。
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