研究課題/領域番号 |
18H00975
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松下 佳代 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (30222300)
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研究分担者 |
小野 和宏 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40224266)
深堀 聡子 九州大学, 教育改革推進本部, 教授 (40361638)
斎藤 有吾 新潟大学, 経営戦略本部, 准教授 (50781423)
丹原 惇 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10636228)
石井 英真 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (10452327)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 知識・スキル / 汎用的能力 / 分野固有性と汎用性 / パフォーマンス評価 / PEPA / PBL / 対話型論証モデル / ミネルヴァ・モデル |
研究実績の概要 |
1.汎用的能力の類型化――能力の汎用性を、①「分野固有性に依らない汎用性」(例:ミネルヴァ大学)、②「分野固有性を捨象した汎用性」(例:PROG)、③「分野固有性に根ざした汎用性」(例:分野別参照基準のジェネリックスキル)、④「メタ分野的な汎用性」(例:IB-DPのTOK)という4つのタイプに分類した。 2.「分野固有性に依らない汎用性」の検討――タイプ①の典型例であるミネルヴァ大学の目標・カリキュラム・評価の特徴を、文献研究により明らかにした。 3.「分野固有性に根ざした汎用性」の検討――新潟大学歯学部では、問題解決能力としての歯科臨床能力の形成を教育目標に掲げ、本科研メンバーが中心となって、独自のカリキュラム(PBLカリキュラム)と評価(PEPA:重要科目に埋め込まれたパフォーマンス評価)を開発・実施してきた。この事例はタイプ③の典型例といえる。2019年度は縦断データの分析を本格的に開始し、難易度の異なるパフォーマンス課題における能力の伸長の評価の方法を提案した。 4.「分野固有性を捨象した汎用性」の検討――「PROG(Progress Report on Generic Skills)」を取り上げ、それが汎用性を謳いながら医療系で育成される能力の評価としては妥当性が低く、タイプ②にあたる可能性が高いことを示した。 5.対話型論証のモデル化と実践――対話型論証(ある問題に対して、他者と対話しながら、根拠をもって主張を組み立て、結論を導く活動)の理論化とモデル化を行った。さらに、中等教育段階(高槻中・高)の教科教育と探究学習、高等教育段階(新潟大学、京都大学)の初年次教育で実践を行い、有効性を示した。この対話型論証は、分野・教科の固有性と共通性を表現することでタイプ①と③を架橋し、分野・教科の特質を比較可能にすることでタイプ④の特徴ももつということができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.汎用的能力の類型化/2.「分野固有性に依らない汎用性」の検討――理論研究の成果を、「汎用的能力を再考する―汎用性の4つのタイプとミネルヴァ・モデル―」として『京都大学高等教育研究』にまとめた(12月)。また、大学教育研究フォーラム(3月)で、参加者企画セッション「汎用的能力は評価することができるのか」を企画・報告した。なお、高大接続との関連でも汎用的能力について大学教育学会シンポジウムで報告し(6月)、『大学教育学会誌』に論考が掲載された(1月)。 3.「分野固有性に根ざした汎用性」の検討――東京で開催されたThe 10th World Education Research Association Focal Meetingにおいて、 Symposium “Defining and assessing disciplinary learning outcomes in higher education: Exploratory developments in engineering, philosophy, and dentistry”を企画し、工学分野と歯学分野に関する報告を行った(8月)。また、大学教育学会(6月、12月)で、PEPAについて報告し、『大学教育学会誌』に論文が掲載された(1月)。 4.「分野固有性を捨象した汎用性」の検討――理学療法分野でのパフォーマンス評価の結果とPROGの結果を比較し、その相関の低さについて、大学教育学会(6月)で報告した。 5.対話型論証のモデル化と実践――高槻中・高における対話型論証の実践を概観し、公開研究会(2月)で報告した(朝日新聞(2020年3月31日付)でも報道)。また、対話型論証モデルを用いたアカデミックライティングの授業デザインの有効性について、新潟大学歯学部の初年次教育での実践をもとに大学教育学会(6月)で報告した。
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今後の研究の推進方策 |
1.汎用的能力の類型化/2.「分野固有性に依らない汎用性」の検討――能力の汎用性の4つのタイプの中でも、タイプ①にあたるミネルヴァ・モデルについては文献研究にとどまっているので、実際に学生がどう学び能力を形成しているのかについて、インタビュー調査や訪問調査を行う。 3.「分野固有性に根ざした汎用性」の検討――2019年度に本格的に開始した縦断データの分析結果、および難易度の異なるパフォーマンス課題における能力の伸長の評価の方法を、論文にまとめる。また、SPSI-R(日本語版)やインタビュー等の分析や科目間での関連の分析をもとに、歯科という分野での問題解決能力の形成およびその拡張としての汎用性の獲得について検討する。さらに、これまでは主に医療分野でPEPAの研究・実践を行ってきたが、理工系総合大学である東京都市大学でのアクションリサーチを通じて、他分野への拡張可能性を検討する。 4.「分野固有性を捨象した汎用性」の検討――2019年度に学会発表した内容について、パーソナリティ調査の結果も組み合わせながら、PROGで測定されている「汎用性」の内実を明らかにし、論文化する。 5.対話型論証のモデル化と実践――中等教育段階および高等教育段階での実践研究の成果を単行本として公開する。中等教育段階では、主に探究学習で対話型論証の実践の拡充を図り、高等教育段階では初年次教育だけでなく専門教育でも実践化する。
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