研究課題/領域番号 |
18H00979
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鈴木 理恵 広島大学, 教育学研究科, 教授 (80216465)
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研究分担者 |
西村 浩子 (西村浩子) 松山東雲女子大学, 人文科学部, 教授 (20248339)
棚橋 久美子 広島国際学院大学, 工学部, 研究員 (30186316)
松尾 由希子 静岡大学, 教職センター, 准教授 (30580732)
福田 安典 日本女子大学, 文学部, 教授 (40243141)
藤方 博之 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (40727674)
高橋 秀樹 國學院大學, 文学部, 教授 (70821990)
米村 千代 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (90262063)
奥井 亜紗子 京都女子大学, 現代社会学部, 准教授 (50457032)
平井 晶子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30464259)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 後継者 / 「家」 / 家訓 / 教訓 / 養子 / 家業 / 後継者育成 |
研究実績の概要 |
一昨年度から昨年度にかけて、各メンバーは、個別あるいは研究班に設定された研究課題に即して、各地の公文書館や史料館、図書館、大学などへの調査旅行によって、一次史料や自治体史収録史料の発掘・収集を進めてきた。その成果を、研究会で報告するとともに、学会発表や論文発表をおこなった。 2019年8月に東北大学で開催された本科研の研究会では、近世の武士や商家の後継者育成に関する報告がおこなわれ、参加したメンバーで議論が進んだ。藤方博之氏によって「近世後期の大名家臣層における後継者育成」が、下向井紀彦氏(研究協力者)によって「近世商家の後継者育成―三井同族の家業見習・家業継承を事例に―」が報告された。藤方氏は、大名家臣層の日記記述を分析して、子弟の育成に当主が関わっていたようすや、「家」で手跡などの初歩的学びがなされたあとに外部の教師に任される実態などが明らかにされた。下向井氏は研究会報告の一部を「三井同族の家業見習いに関する基礎的研究」(『三井文庫論叢』53号、2019年)にまとめて発表した。従来、三井家の後継者育成については網羅的な研究にとどまっていたが、下向井氏は豊富な史料を駆使して、家業見習いの規則整備過程、同族子弟の見習い派遣状況の実態、見習いを引き受ける呉服部門の役割などを詳細に明らかにした。 2019年11月の中国四国教育学会において鈴木理恵は「咸宜園塾主広瀬家による後継者育成」を発表した。儒者として存立することに成功して「家」を興した広瀬淡窓が、養子に塾政(門人教授)や塾舎などを伝えたことや、養子を幼い頃から後継者として育成していたことなど、継承実態が明らかにされた。 上記のように、昨年度は研究会・学会での発表や論文発表を通じて、近世期の武士・商人・儒者の「家」の後継者育成の実態に関する研究が進展した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①諸階層の「家」後継者育成はどのような環境、階梯、方法で行われたか、という具体相を通史的・実証的に明らかにすること、②江戸時代に焦点を当てて諸階層の後継者育成の共通項を見出すこと、③以上から得られる知見を通じて、日本の「家」の後継者育成の特徴を解明することを目的としている。 初年度の研究会において「家」とはなにかを確認のうえ、「家」研究の整理がなされ、本研究の問題の所在について共通理解を図った。そのうえで、中世の武士の後継者育成に関する報告がなされた。2019年度においては近世の武士、商家、儒者の「家」における後継者育成に関する研究発表がなされ、江戸時代の後継者育成に関する理解が深まった。 上記①のうち近世まで通史的・実証的に明らかにしてきた。②については、昨年度の蓄積のうえに本年度も引き続き江戸時代の「家」の後継者育成に関する研究を進めることで、諸階層の共通項を明らかにしていく予定である。 各メンバーは、共著の刊行に向けて、共同研究の目標を見据えながら、各自の研究課題に取り組んでおり、その成果を論文や著書の形で発表しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
各メンバーは対象として設定したフィールドにおいて、昨年度までに引き続き、研究課題に即して一次史料や自治体史収録史料を発掘・収集する。その成果を持ち寄り、研究会で報告をし、議論を重ねる。 研究会では、主として、初年度は中世の、昨年度は近世の「家」の後継者育成に関する成果報告がなされた。本年度は引き続き近世に関する研究を深めるとともに、近現代に関する成果報告を進める予定である。そうして中世から現代まで通史的にみたところで、議論を通じて、後継者育成の階梯・方法の確立期を特定し、特徴を析出することを目指す。 また、2018年度の研究会ではゲストスピーカーを招聘して西洋の「家」での子育てに関する歴史研究を紹介してもらったが、今年度は東洋の「家」に関してゲストスピーカーに報告をおこなってもらい、日本の特徴を解明するための比較の視点を獲得することを目指す。メンバーによる報告とゲストスピーカーによる報告を受けて、全員で議論を重ね、問題意識の共有や先鋭化をはかる。 各自の進捗状況に応じて学会で個別研究発表を行う。
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