研究課題
本研究は、若者の大人への移行に、教育、労働市場、社会保障、家族などの諸制度・慣行が与える影響を、先進国間の比較を通じて明らかにするとともに、それを通じて若者の移行支援にかかわる制度・政策へのインプリケーションを得ることを目的とした。特に注目したのは、就労への移行と、離家・家族形成などの移行との関連性である。本研究では、日本・イギリス・ドイツ・スイス・ノルウェーを対象に、パネル調査データなどを用いて、教育・労働市場・社会保障・家族の諸制度・慣行が若者の移行に与えている影響を比較するという方法をとった。2020年度には前年度までの進捗を踏まえ、本研究の最終まとめと成果の出版準備をおこなう予定であった。しかし前年度末からの新型コロナウィルス感染症の蔓延による渡航制限等のため、海外研究協力者との共同作業をすすめることが不可能となり研究期間を2年間延長した。感染蔓延が終息に向かった2022年9月、海外研究協力者を東京に招聘しワークショップを開催し、残された期間で成果刊行物の執筆を進め、研究期間終了となった本年3月末までに、第1次草稿をほぼ完成させることができた。英文版はSpringer社から、日本語版は東京大学出版会から刊行される予定である。主な知見は、①日本はヨーロッパ各国に比べ20代末までの離家と結婚・同棲率が男女とも低い。②男性においては労働市場ポジションが共通に、離家・家族形成に大きな影響を与えている。但し国による非正規雇用の性格の違いにより、困難層の現れるポジションが異なり、特に日本ではドイツとともに、非正規雇用男性に移行困難現象が認められる。③無業・非正規などの就労不安定層の離家・家族形成を支える日本の社会保障制度はヨーロッパ各国に比べ制度整備・捕捉率ともに顕著に低く、就労が不安定な層の困難を支える点で、著しく劣っている。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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