研究課題/領域番号 |
18H00997
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤澤 啓子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (00453530)
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研究分担者 |
中室 牧子 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 准教授 (20598403)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 保育 / 発達心理学 / 教育経済学 |
研究実績の概要 |
平成30年度は,下記の(1)と(2)について,国内学会シンポジウムにおいて発表した。 (1)本研究課題に関連する研究の概観 就学前教育・保育施設の利用が子どもの発達に与える影響については、発達心理学や経済学の分野で多くの研究がなされている。ただし、各分野で重視しているところは、必ずしも一致しない。経済学では主に、就学前教育・保育の因果効果の識別を重視し研究を進めてきたが、就学前教育・保育の質や子どもの発達を多面的にとらえることなどができていない。一方,発達心理学では保育環境評価スケール(ITERS,ECERS)などを用いた質の多面的な評価や、子どもの発達に関するさまざまな測定を行ってきた。しかし、同分野における先行研究は,就学前教育・保育の利用による因果効果の識別には課題を残している。これらの点について指摘し,発達心理学と経済学の研究者が共働することにより両分野の知見を補完しながら研究フロンティアを大きく広げていくことができる可能性があることを示した。 (2)1年目に収集した保育環境評価スケール(ITERS-R/ECERS3)の記述統計の確認と探索的分析 ITERS-R及びECERS3ともに,評価スコアは園によるばらつきが大きいことが分かった。両スケールを用いた海外における先行研究と本研究課題のスコアをサブスケールレベルで比較したところ,「相互関係」に関しては相対的に高いことが見られた。しかし,全体的に,ITERS-R及びECERS3が提示しているサブスケールの内的一貫性が低いことが分かった。この現象は,両スケールが開発されたアメリカとは異なる保育観や基準,ガイドラインを有する国(スイスなど)において実施された研究でも指摘されていることである。この点については,ITERS-R及びECERS3を保育の質の指標として使用する上での課題として引き続き検討を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,ご協力いただいている自治体担当部局との調整を重ね,初年度に実施した保育環境評価スケールの調査結果について,研究協力園へフィードバックする内容を確定させた。具体的には,調査員の所見コメントのほか,研究協力園全体のスコアの状況と自園のスコアの両方を相対的に理解できるフィードバック票を作成し,送付できた。さらに,施設長会議の場において,保育環境評価スケールの内容の説明や海外における同スケールを用いた研究の紹介などをおこない,自治体や研究協力園との関係維持に努めた。 また,初年度に実施したコホートとは異なるコホートとなる1,3,5歳児クラスでの保育環境評価スケールを用いた調査,保護者調査,保育士調査をトラブルなく実施し,データ収集を終えることができた。さらに,初年度に5歳児クラスに在籍した児童の追跡調査として,自治体内小学校にご協力を得て小学校1年生の保護者を対象とした質問紙調査を実施することができ,95%以上の高い回収率で保護者からのご協力を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も,ご協力いただいている自治体担当部局や研究協力園,小学校との関係維持に努め,研究計画通りに調査を進める。ご協力いただく園や小学校に対するフィードバック内容の改善も引き続き行う。研究成果のアウトリーチも進める。
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