研究課題/領域番号 |
18H01022
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
井上 典之 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90805623)
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研究分担者 |
日野 圭子 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (70272143)
植田 誠治 聖心女子大学, 文学部, 教授 (90193804)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非認知能力 / 授業研究 / 社会性 / 自己効力感 / 算数教育 / 教科教育 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度となる2018年度ではまずベテラン教師が算数を教える中で生徒の非認知能力をどのようにして促進しているかを調べるために、算数教育のエキスパートであると考えられる小学校4-6年生担当のベテラン教師の協力を近隣地域の小学校で募った。多くの学校ではそのようなベテラン教師の数が少なく協力してくれる教師の数が10人未満になることが予想されたため、関東圏の大学で教育研究を行なっている研究者2名にも研究協力者としてデータ収集の協力を依頼し、同時にサンプリングのフレームワークを4-6年生から3-6年生のクラスに広げた。最終的に13人のベテラン教師の算数授業のビデオ撮影とインタビュー、児童のアンケーからなるデータ収集を実施することが可能となり、データ分析の過程で上に述べたリサーチクエスチョンに答えるのに十分な理論的飽和が得られたためそのような形で初年度のデータ取集を終了した。 現在までのデータ分析では、ベテラン教師は教科を教える中で様々な形で生徒の自律性や自己効力感、社会性を伸ばし、他者との関わりの中でチャレンジを乗り越えていく自信と能力をつけることを目指して授業設計と授業実践を行なっていることが明らかになった。同時にそれらを具体的に示すことのできる授業場面の例や教師インタビューのセグメントがいくつも得られ、今後の教師教育や教師教育研究に新しい地平を開く上で十分と考えられる研究成果が得られた。 同時に2-3年目への準備として、イギリスのケンブリッジ大学、アメリカのサンノゼ州立大学を訪れ、1年目で得られた成果を共有し今後の共同研究についての打ち合わせを行った。またタイのカセツァート大学の研究者を招聘し、本研究でデータ収集を行ったベテラン教師の授業参観や教師との交流を行い2019年度よりの国際共同研究の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以上に述べたように本研究の1年目の目的を達成するに必要なデータ収集とデータ分析がほぼ完了したことから1年目の研究計画は概ね順調に進んだと考えられる。データのサンプル数は当初目標としたn=15ではなくn=13となったが、2年目に実行する研究計画につながるだけの十分な知見が得られた。また2-3年目への準備としてヨーロッパ、アメリカ、アジアの大学の研究者と共同で本研究で得られた研究成果をもとにして国際授業研究プロジェクトを行なっていくための準備が順調に進んだことから、その点でも本研究の進捗状況も良好と考えられる。具体的にはイギリス、アメリカに共同研究者を訪問して共同研究についての協議を行ったことから、2019年度には研究者を招聘してこれからの共同研究についてさらに突っ込んだ研究協議が行えることとなった。タイの研究者には2019年度の前倒しで初年度に日本への招聘が実現し、2019年度からタイにおいて本研究の成果にもとづいた授業研究会の発足が可能となった。また本研究の初年度の成果を9月に行われる世界授業研究学会(WALS 2019)で発表(paper presentation)するための申請書が受理され、アムステルダムで本研究の研究成果の発表を行う予定である。 以上のことから、本研究の2018年度の進捗状況は順調であったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の2019年度には初年度に得られたデータの分析を完了し、あと2人のベテラン教師からデータを収集し、当初の目標であったn=15のサンプル数を達成する。同時に本研究にもとづいた非認知能力促進についての授業研究会を近隣地域の小学校あるいは教育センターで実施する。それと同時進行で1年目に共同研究を行なう準備を行った海外の3大学とは実際に共同研究を進めていく。具体的には6月末にタイ政府教育省IPST招聘のバンコクにおける授業研究についての講演・ワークショップにおいて本研究の成果を発表し、そこからカセツァート大学の研究者と共同でタイにおける授業研究会を発足させる。また10―11月にはイギリスのケンブリッジ大学、アメリカのサンノゼ州立大学から研究者を招聘し、1年目にデータ収集を行った小学校を訪問して日本の小学校のベテラン教師が教科を教える中でどのようにして生徒の非認知能力を促進しているかを紹介し、2020年度にイギリス・アメリカで授業研究会を共同で発足する準備を行う。9月には本研究の1年目で得られた成果をアムステルダムで開催される世界授業研究学会(WALS, 2019)で発表する。また2020度に行われる複数の国際学会での研究成果の発表に向けてプロポーザルを作成し提出を行う。同時に本研究の成果を論文として海外の学会誌へ提出するための準備も行う。 3年目の2020年度には2年目の準備にもとづいて海外3大学を拠点とする授業研究会を実施する。また海外で行われる複数の国際学会で研究成果を発表し、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの研究者と国際的に教科教育における非認知能力の促進のための授業研究についての国際共同研究を進めていく。最終的には本研究で得られた成果を海外の学会誌に投稿することを目指す。
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