研究課題/領域番号 |
18H01022
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
井上 典之 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90805623)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非認知能力 / 授業研究 / 教科教育 / アクション・リサーチ |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは前年度に得られたデータにより、日本の小学校のベテラン教師は教科を教える中で様々な形で児童の社会性を伸ばし、他者との関わりの中で自律性や自己効力感、チャレンジを乗り越えていく自信と能力をつけるためのアクションを行なっていることが明らかになった。この研究成果の発表をオランダで開かれた全世界授業研究学会(World Association of Lesson Study)で行なったが、参加者からは好意的なコメントが多く寄せられた。同時に国内外で教科教育において児童の非認知能力を促進させるための授業研究を実施するための準備を行った。国内では奈良県教育委員会と共同で県内の複数の小学校において若手教員が児童の対話的な学びや内的動機などを促進するためのアクション・リサーチの支援を行い、児童の対話的で深い思考を促すことをテーマとした教員研修と公開授業研究会を実施した。国際的にはオランダのアムステルダム大学、イギリスのケンブリッジ大学、タイのカセツァート大学において本研究で得られた成果をもとに現地の研究者との研究協議や教師教育担当者対象のワークショップを行い、それぞれの拠点で児童の非認知能力を促進することを目的とした授業研究会を発足させる準備を行った。イギリスのケンブリッジ大学、アメリカのサンノゼ州立大学からは研究者を複数名招聘して本研究でデータ収集を行った小学校を訪問してベテラン教師の授業を参観し、ベテラン教師・校長との対話を行うと同時に今後の共同研究についての協議を行った。また1年目に収集したデータのサンプルサイズはn=13であったのでn=15-20を目指して追加のデータ収集を試みたが、コロナウイルスの影響で学校が休校となり結果的に収集できたデータはn=14となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以上に述べたように、前年度に得られた研究成果をベースに児童の非認知能力を促進させるための国内外での授業研究の準備が進み、また国際学会での研究発表も順調に行うことができたことから本研究の2年目の研究計画は概ね順調であったと思われる。国内ではすでにアクション・リサーチを方法論的フレームワークとした若手教員中心の授業研究会が発足し、また国際的にはアメリカ、ヨーロッパ、アジアにおいて授業研究会を実施するための準備としてオランダのアムステルダム大学、イギリスのケンブリッジ大学、アメリカのサンノゼ州立大学、タイのカセツァート大学との研究協議が順調に進んでおり、2020年度にはそれらの大学の研究者との共同研究として本研究の成果にもとづいた授業研究会の実現を目指すことが可能となる。本研究のこれまでの成果を発表するために2020年8月に行われる予定であったヨーロッパ教育学会(European Conference on Educational Research)にプロポーザルを提出したが、コロナウイルスの影響で学会がキャンセルになり発表を行うことはできないこととなった。しかしながらコロナウイルスの状況が改善され、国内外の人の行き来が問題なく行われるようになれば当初予定していた通りに国際学会において本研究で得られた成果の研究発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の3年目となる2020年度には、本研究で得られた研究成果に基づいて児童の非認知能力を促進するための授業研究会を国内外で実施する。国内では奈良県教育委員会とのコラボレーションを継続し、奈良県内のモデル校においてアクション・リサーチを方法論的フレームワークとした授業研究会を実施する。それと同時に2年目に研究協議を行った海外の大学とはさらに共同研究協議を進めていく。具体的にはイギリスのケンブリッジ大学、アメリカのサンノゼ州立大学の研究者と共同でイギリス・アメリカにおいて教科教育における非認知能力促進のための授業研究会を発足するための最終準備を行う。またタイのカセツァート大学の研究者とはバンコク近郊において教科教育における非認知能力の促進を目的とする授業研究会を実際に発足させる。オランダのアムステルダム大学とは生徒の全人格的成長を促進する授業研究を成功させるための条件についてのさらに踏み込んだ共同研究をスタートさせる。またヨーロッパ教育学会などの国際学会において本研究の研究成果と進行状況についての研究発表を行うためのプロポーザルを提出し、同時にそれまでにコラボレーションを行ってきたヨーロッパ、アメリカ、アジアの研究者と教科教育において非認知能力を促進するための国際共同研究を計画していく。最終的には本研究の成果を論文として海外の学会誌へ提出するための執筆活動を行い、本研究で得られた成果を海外の学会誌に投稿することを目指す。
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