研究課題/領域番号 |
18H01029
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
隅藏 康一 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (80302793)
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研究分担者 |
古澤 陽子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (10619183)
吉岡 徹 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 講師 (60771277)
高橋 真木子 金沢工業大学, イノベーションマネジメント研究科, 教授 (70376680)
枝村 一磨 神奈川大学, 経済学部, 助教 (20599930)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イノベーション / 産学連携 / 大学 / 研究資源 / 社会還元 |
研究実績の概要 |
大学が研究資源を獲得し、それにより研究活動を活性化し、学術的インパクトを創出するとともに、研究成果を産学連携により社会還元することで経済的・社会的インパクトを創出するためには、大学においてどのような体制整備を進めればよいのか。これは学術上興味深いものであると同時に、実務上の要請も大きい問いである。この問いに答えるには、適切なデータセットを構築することが必要である。研究代表者の隅藏は、文部科学省の「産学連携調査」の結果に注目し、平成15年度から直近年度までのデータを組み合わせて本研究のデータセットの核として用いることを考えた。その上で、本研究の目的を達成するために、総務省の科学技術研究調査、大学の財務データ、論文データ、特許データ等と接続し、分析に用いるという研究計画を立案した。初年度においては、第一に、先行研究の包括的な調査と仮説設計を行った。また、国立大学、公立大学、私立大学、大規模な総合大学、地方の単科大学など、様々な態様の大学における実態を調査するため、定性的なインタビュー調査を実施した。これと並行して、分析を実施するために必要となる基本的なデータセットの構築を行った。産学連携調査の全調査項目のパネル化を行うとともに、大学財務データ、ならびに総務省が提供する科学技術研究調査のデータ(研究者、研究補助者、技能者、研究事務その他の関係者、などの数に関するデータが含まれている)とも接合した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、大学における産学官連携活動や外部研究資金獲得状況、研究推進支援人材の配置状況等に関するオリジナルのパネルデータセットを構築し、産学官連携コーディネーターとリサーチ・アドミニストレーター(以下、URA)を研究推進支援人材として、それら人材の有無・人数と、獲得した外部研究資金の金額・契約件数との因果関係を定量的に分析した。分析の結果、以下の効果が統計的な有意性をもって明らかになった。 1.受託/共同研究費の獲得に対しては、資金の拠出元に拠らず、産学官連携コーディネーターやURAの配置が、正の効果を示した。評価指標別にみると、獲得件数に対しては産学官連携コーディネーターの方が配置有無や人数増加による効果が大きく、獲得金額に対してはURAのほうがその効果が大きいことが示された。 2.科研費の獲得についても、産学官連携コーディネーターやURAの配置が正の効果を示した。しかし、配置人数による影響についてはURAの場合のみ正の効果を示した。 3.受託/共同研究費について、産学官連携コーディネーターやURAの人数二乗項が、外部研究資金の拠出元を問わず、獲得金額、件数に関して負で有意となったことから、研究推進支援人材の配置は、機関に配分される外部研究資金の獲得に貢献しているが、ある一定の人数でその効果は頭打ちになることが示唆された。 以上のことから、産学官連携コーディネーターやURAの配置は、確かに外部研究資金の獲得件数・金額の増加に有意に貢献していることが明らかになった。また、目的を外部研究資金獲得に特化した場合、配置する研究推進支援人材の最適な規模というのが存在し、対象とする外部研究費の種類や、評価指標をどう定義するかにより、その最適値は異なるであろうということが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
産学連携コーディネーターとURAの機能の違いを受けて、それらを拡充する際には、人数増加のインパクトが徐々に小さくなりはじめるタイミングを見極めることが重要になってくる。大学における効率的な研究マネジメントのためには、各大学の研究者数など規模に応じた最適な配置バランスをとることが求められることになるが、その最適規模水準やURAと産学官連携コーディネーターの最適な配分バランスといったものは、大学の設置区分や研究規模、研究内容や性質、病院収入の有無などによっても異なると考えられ、そうした視点からの更なる研究は今後の課題である。加えて、研究活動の時間的経過や政策動向等も踏まえたうえで、研究分野や相手先民間企業の規模や研究力等も考慮した分析フレームワークの構築も今後の課題である。 科研費獲得の促進に対しては、URAの配置が有効であり、人数増加に伴い獲得する科研費額も増加する。しかしその関係は線形ではなく、やはり科研費との関係においても、人数増加によるインパクトを最大限に享受するための最適な人数規模水準が存在する。その最適な水準を見極め、大学における研究マネジメントの実務に応用していくための方法論も今後検討していく必要がある。 また、これまでの研究では説明変数として研究推進支援人材の人数に着目した分析を行ったが、研究推進支援人材の雇用状況(任期有無、雇用財源)や年齢構成、キャリアパス等の違い、産学官連携コーディネーターとURAのバランス等を考慮した分析も必要になってくるだろう。さらには、外部研究資金獲得の主たる手段である産学官連携のパフォーマンスを示す指標として、研究のアウトプットや質(論文数や引用等)に関する指標の精緻化をはかり、それら研究アウトプットの質に関する指標を組み込んだ推計モデルを構築することも、今後のさらなる分析において重要である。
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