研究課題/領域番号 |
18H01039
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
澤 隆史 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80272623)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 聴覚障害児 / 日本語 / 文法 / 学習教材 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、昨年度の研究を踏まえて、以下の3つの点について研究を行った。 (1)国語、理科、社会の各教科で使用する小学校教科書20冊を対象に、1,130種類の文法項目の使用頻度を分析し、各学年および教科間における使用傾向の差異や特徴について検討した。また使用されている各項目について、日本語能力試験での難易度と照合した。検討の結果、「格助詞」「並列助詞」「時制・テンス」「複文と接続詞(付帯状況・並列)」「は・が」などの項目は小学校低学年より頻出すること、「格助詞」等のカテゴリー内でも表現によって学年間の使用傾向が異なること、表現の使用には教科に応じた特徴があることなどが明らかとなった。なおこの研究については、論文として公表した。 (2)聴覚特別支援学校の児童生徒が書いた作文を対象に、使用されている文法項目の頻度を分析し、学習時における各項目の重要度を評価した。分析の結果,文を構成する基本となる文法項目は,小学生段階から頻用され,中学部以降,表現が徐々に多様化していくことが推察された。また児童生徒が使用する項目は、日本語能力試験における低難易度の項目に偏っていることが示された。以上の分析結果を踏まえ、研究(1)の結果と照合させて、聴覚障害児に対する日本語文法の指導における難易度表を作成・提案した。この研究については、日本特殊教育学会第58大会において報告するとともに、論文として公表した。 (3)研究(1)と(2)で得られた文法項目の難易度を踏まえ、聴覚障害特別支援学校において文法指導を行う際のプリント作成アプリケーションソフトを試作した。このソフトでは、指導に使用する文法項目を選定し、それぞれの項目について多肢選択問題と記述問題の2種類の問題作成、問題数、選択肢数の設定が柔軟にできるような工夫を取りいれた。本アプリについては、令和3年度の完成を目指して、現在、開発継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、(1)小学校教科書において使用されている文法項目の抽出と難易度の検討、(2)聴覚障害児童生徒の作文における文法項目の使用傾向の分析を行い、聴覚障害児への文法指導を行う際の難易度の設定を行った。また(3)文法指導に使用できるプリント教材作成用アプリケーションソフトの開発に着手した。(1)と(2)の研究については、論文ならびに学会発表の形で公表した。令和2年度は、教科書および作文に関する研究成果を踏まえ、文法指導用の教材文を作成し、データベース化を行う予定であったが、コロナ渦の影響により研究補助員の業務が滞ったことで、作業の進捗が難しかった。データベースには数千の文を登録する予定であり、作業に支障が生じたことで研究全体の進捗がやや遅れることとなった。ソフトの試作については、おおむね順調に進んでいるが、現時点では本年度の目的・目標に照らしてやや研究の遅れが生じることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度に着手した文法指導用アプリケーションソフトについて、画像を利用した問題作成のソフトと、児童生徒が個別に実施できるソフトを加えて、完成をさせることを企図している。また令和2年度に十分進まなかった教材文のデータベース化を進める予定である。さらに試作したソフトについて、聴覚特別支援学校の教員に試用してもらい、ソフトの有用性や改善点について検証する予定である。また児童生徒用の個別実施ソフトについても、試用を行い、文法理解への効果等について検証を行う予定である。なお本年度に実施した研究の成果については、日本特殊教育学会第60回大会等で発表するとともに、研究論文誌を通じて公表する予定である。
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