研究課題/領域番号 |
18H01050
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
田中 孝治 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 准教授 (60583672)
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研究分担者 |
仲林 清 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (20462765)
池田 満 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80212786)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 経験学習 / 自己調整学習 / メタ認知 / 動機づけ / 遠隔教育 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け多くの大学が、演習科目も含め遠隔授業への変更を余儀なくされた。これらの遠隔授業の多くが、教員は学生から提出された成果物によって、学生の学習状態を把握しようとする。しかし、教員の目の届かない場所で学びが行われることもあり、学生の学習のプロセスの把握は困難である。そのため、プロセスでの行き詰まりに応じた学習支援が難しく、従来の対面授業よりも、教員からのプロセスに対する学習支援が期待できない。このような学習環境での学びを効果的にするためには、学習者が自身で学習プロセスをモニタリングし、学習活動をコントロールすること(自己調整的な経験学習)が求められる。この学習プロセス把握の困難性は、本研究が対象とする多文脈インターンシップの持つ特性の一つであり、自己調整的な経験学習力の育成は、本研究が目的とするところである。そこで本研究は、タイの大学で行われたプログラミングを学ぶ遠隔授業(10週間)を対象に、経験学習内的プロセス支援システムを学習者に提供することで、自己調整的な経験学習の支援を行い、その学習効果について検討した。その結果、振り返り作文(ELレポート)の記入において、経験学習プロセスの各ステップ(具体的経験、内省的観察、抽象的概念化、能動的実験)の繋がりを意識づけ、各ステップの統合を促す役割を果たしていることが示された。これらの結果について、海外の論文誌に投稿するために執筆中である。 また、経験学習の内的プロセスを効果的に循環させるためには、抽象的概念化における言語化を促進する必要がある。そこで、学んだ専門概念を使って経験を振り返る内省支援方式を実践した。その結果、過去の経験の振り返りを深め、経験を意味づける学習機会となっていたことが示された。これらの結果については、国内研究会で口頭発表を行い、現在、国内の論文誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度開発した支援システムを教育実践で試行した。本年度に支援システムを試行する実践の場として想定していたタイでの多文脈インターンシッププログラムが、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大の影響を受け開催が再延期となった。そのため、実践の場を、同大学で実施されたプログラミングを学ぶ内容の遠隔授業に変更した。遠隔授業では、学生から提出された成果物によって、教師が学生の学習状態を把握するが、学生の学習のプロセスの把握が困難である。この学習者の学習プロセス把握の困難性は、多文脈インターンシップの持つ困難性の一つであり、この遠隔授業での実践は、本研究の実践の場としてふさわしいと判断した。現在は、その成果を論文としてまとめている。その点においては、本事業は世界的な状況の変化に対応しながら概ね順調に進展していると判断できる。一方で、申請段階で予定していた、多文脈インターンシップでの試行実験が実施できていないため、タイの国内事情を鑑みながら、次年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大の影響次第であるが、今年度に試行できなかったタイでの多文脈インターンシップでの試行実験を実施する予定である。その思考実験の結果を育成モデル、分析・評価モデル、支援フレームワークのそれぞれに反映させる予定である。感染拡大の影響が続き、タイでの多文脈インターンシップの実施が困難な場合は、引き続き、実習型の遠隔授業にて、支援システムの実証実験を実施する予定である。これと同時に、今年度の試行から得られた結果を基に、育成モデル、分析・評価モデル、支援フレームワークを改善する。これらの成果については、国内外を問わず社会に発信していく予定である。
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