研究課題/領域番号 |
18H01054
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
光原 弘幸 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (90363134)
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研究分担者 |
谷村 千絵 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (40380133)
根本 淳子 明治学院大学, 心理学部, 准教授 (80423656)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 防災教育 / 拡張現実感 / モバイル・ウェアラブルデバイス / 教育哲学 / インストラクショナルデザイン |
研究実績の概要 |
本研究は,5つのフェイズから構成されており,本年度(2019年度)はシステム開発・実践準備に取り組んだ. (i) 昨年度提案した避難訓練モデルに基づき,災害疑似体験VRを開発した.VRにおける避難行動を調査した結果,非率先避難者の可視化による意図的な避難失敗の誘発が訓練効果を高めることを再確認した.また,竜巻避難を対象に,VRとARによる視聴覚的表現の影響について実験調査した結果,VRがARよりも学習意欲を向上させること等がわかった. (ii) 昨年度実装した基本機能を基盤として,マーカレスARによる災害状況・避難者可視化機能を試作した.予備実験を通じて,率先/非率先避難者の可視化により緊迫感が向上/低下する結果が得られた.この結果は避難訓練モデルを支持するが,さらなる機能改善が課題視された. (iii) 南海トラフ巨大地震を想定した避難シナリオ(徳島県内)に基づき,災害状況・避難者可視化機能付きアプリを用いる避難訓練の基本設計を行った.屋内外ハイブリッド避難訓練に対応させるため,アプリへのBLEビーコン導入についても検討した. (iv) 現実世界の複雑さと当事者性の視点から防災道徳授業を分析し,ジレンマをほぐすことの重要性とそのICT活用型避難訓練への適用手法(避難訓練の協調的内省等)について検討した. (v) 防災教育実践先進校におけるインタビュー調査の結果を計量テキスト分析し, 発話の傾向などから,防災教育において地域性と主体性が重要であることを確認した.ICT活用型避難訓練の没入感を向上させるために,これらの性質を強調した訓練シナリオを検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はシステム開発・実践準備期に位置づけており,研究実績の概要(i)~(v)と照らし合わせて,3年目の実践モデル構築に着手するための技術的基盤を整備できたと考える.災害状況・避難者可視化機能と避難訓練アプリの連携は遅れ気味ではあるが,雑誌論文・学会発表を含めて複数の研究成果を発表することができている. (i) 災害疑似体験VRを開発し,非率先避難者の可視化による意図的な避難失敗を誘発する避難訓練モデルの有効性を示すことができた. (ii) 災害疑似体験VR・ARの比較実験を通じて,避難訓練へのAR導入における課題(リアリティや緊迫感の向上等)を見いだすことができた. (iii) マーカレスARによる災害状況可視化機能の試作と実験を通じて,その有効性を確認するとともに,機能改善を検討することができた.また,今後実施する避難訓練の基本設計にもつなげた. (iv) 防災道徳授業や防災教育実践先進校におけるインタビュー調査の結果を分析し,より実践的なICT活用型避難訓練(特にARを導入した避難訓練)につながる知見を得た.これらが3年目の円滑な研究進捗に有利に作用すると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に続き本年度も「おおむね順調に進展している」状況にあり,大きな計画変更なく今後の研究を推進していくことができる. 次年度(2020年度)は,実践モデル構築期にあたる.マーカレスAR災害状況可視化機能を拡充させながら,開発済み避難訓練アプリとの連携・統合を進め,徳島県内の教育現場を対象に実践で活用する.そして,実践結果に基づいて避難訓練実践モデルを構築する.なお,コロナウィルス感染拡大の状況によっては,教育現場での実践が難しくなることも予想されるが,安全を最優先しながら,実践の準備を進めておく.以下に次年度の主な研究項目を示す. (i) AR災害状況・避難者可視化機能のアプリへの統合,(ii) AR災害状況・避難者可視化機能のバリエーション化およびリアリティ向上,(iii) 徳島県内での避難訓練設計・実践,徳島県外での実践に向けた交渉・設計,(iv) 教育現場での実践を通じたアプリのリアリティの検証・定義,(v) 実践データの分析,(vi) 分析結果に基づく避難訓練実践モデルの構築
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