研究課題/領域番号 |
18H01055
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井上 奈良彦 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (90184762)
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研究分担者 |
竹中 野歩 九州大学, 言語文化研究院, 学術研究者 (50818383)
内田 諭 九州大学, 言語文化研究院, 准教授 (20589254)
久保 健治 九州大学, 言語文化研究院, 学術研究者 (90818361)
青木 滋之 中央大学, 文学部, 准教授 (50569069)
加藤 彰 九州大学, 言語文化研究院, 学術研究者 (80818360)
山形 伸二 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (60625193) [辞退]
蓮見 二郎 九州大学, 法学研究院, 准教授 (40532437)
是澤 克哉 広島修道大学, 学習支援センター, 学習アドバイザー (90791335)
金子 晃介 九州大学, サイバーセキュリティセンター, 准教授 (30735121)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | クリティカルシンキング / アクティブラーニング / アプリ / 議論教育 / ゲーミフィケーション |
研究実績の概要 |
本研究ではクリティカルシンキングの向上を目的としたアクティブラーニング型教材アプリを開発し、その教育効果を検証する。2019年度は主に1.問題の難易度出し分け、2.アプリの改良(ゲーミフィケーション機能実装)、3.学習効果の検証を行った。 2018年度に開発したプロトタイプアプリ「C-training」のモニター利用で出された意見を踏まえて2019年度は改良を行った。ライセンス契約したクリティカルシンキングトレーニング問題集を事前に大学生に解いてもらい、難易度の出し分けを行い、その結果を元にレベルやスキル別問題セットを作ってアプリに搭載した。また継続的な学習を促す狙いで一日に挑戦できる問題セットを3回迄に設定した。更にゲーミフィケーションとして学習進捗率を個人やチームで競えるよう、ランキング機能を実装した。 本研究では「ゲーミフィケーション要素を搭載したアプリの方が、より学生が取り組みやすく、多くの問題を解き、学習効果が上がる」という仮説を立てた。仮説に基づき、124名の学生協力者を下記のように3グループに分けて対照実験を行った。①2018年度に作成したアプリ(ゲーミフィケーション無版)で自主学習するグループ ②2019年度に開発したアプリ(ゲーミフィケーション有版)で自主学習するグループ ③介入のない対照群 2ヶ月間のアプリ試用期間の前後に、被験者全員にほぼ同じ難易度のテストを行い、点数の伸び率をグループ間で比較したが、アプリを試用していない対照群③のプレテスト・ポストテストの点差には統計的有意差は見られなかった。一方、①ゲーミフィケーション無し版・②有り版のいずれのグループにおいても統計的有意差が確認され、アプリ学習をすることで、クリティカルシンキングテストの点数が向上することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の大きな目的は、クリティカルシンキングの向上を目的としたアクティブラーニング型教材アプリの開発及びその教育効果の検証を行うことである。2019年度は計画に沿って以下の取り組みを行ったため、研究進捗状況は概ね計画通りである。①問題内容と機能についてアプリの改良を行った。②アプリを使って学習効果が得られるかどうか検証した。③ゲーミフィケーション機能が学習効果向上に正の影響を与えるか検証した。④アンケート調査やインタビュー調査を行い、アプリ利用の感想やクリティカルシンキング学習に対する態度・姿勢について分析した。 アプリ試用期間前後に実施したプレ・ポストテスト結果により裏付けられた一定の学習効果のあるクリティカルシンキングトレーニングアプリを開発したことは、2019年度の大きな達成点である。またアプリ試用期間後のアンケート調査やインタビュー調査から、学生が隙間時間にスマホで手軽に自主学習するという利用行動や、クリティカルシンキング問題に対する苦手意識の克服につながっていることが明らかになった。開発しているアプリはクリティカルシンキング初学者向けの自主学習教材としての利用を目的としているため、その点においても計画は順調であると考えている。ただし、研究チームが立てた仮説とは異なり、ゲーミフィケーションの有無で学習効果に差は見られなかった。後述するがこれについては2020年度に再検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度前期の計画:既述の通り、研究チームの立てた仮説とは異なり、アプリのゲーミフィケーションの有無は学習量とそれに基づく学習効果に影響を与えなかった。これは、被験者がアプリによる学習を「宿題」と捉えて取り組んでしまったことが原因だと考えられる。そのためもう一度、より学生の自主的な取り組みに任せた条件下でゲーミフィケーション有り版・無し版のアプリを一定期間試用してもらい、2019年度のように検証を行う。
2020年度後期:教育現場で利用可能なアプリに近づくよう、機能の再検討や充実を図り、少人数の学生や教員に利用してもらう。アプリには指導者が設定する機能があるが、その部分のユーザーフレンドリー性も追求し、幅広い教育現場で役立てられるアプリを目指す。教育者の不足するクリティカルシンキング教育現場において、学生の自主学習の一歩となるアプリを完成することが研究の最終目標である。
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