研究課題/領域番号 |
18H01066
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 和彦 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70707075)
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研究分担者 |
中田 崇行 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50381687)
桜井 良 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (40747284)
小林 博樹 東京大学, 空間情報科学研究センター, 准教授 (60610649)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フェノロジー / サイバーフォレスト / 気候変動学習 / 省察 / 自然体験 |
研究実績の概要 |
気候変動学習には、時空間的に身近な問題として認識することが困難という課題がある。この解決に向けて、20年以上にわたり蓄積されている定点連続写真・録音の活用を検討する。自然体験活動を行った中学生を対象に、同地の定点連続写真・録音を提示することで、自然体験が省察(振り返り)され、その結果、気候変動学習における時空間認識が学習者自身の自然体験をもとに拡張されると考えた。この、自然体験と気候変動学習を定点連続写真・録音で繋ぐ省察プロセスの解明に向けて、次のことを行った。 (1) 2019年8月に志賀高原にて中学生80名を対象にした実験を行い、カメラ及び加速度センサを組み合わせたハードウェアを用いてデータの収集を行った。これにより取得したデータを用いて、人間の知見に基づく集中度評価アルゴリズムを開発した。 (2) 開発したアルゴリズム評価値の妥当性を検証するために、2019年8月のプログラム実施時に参加している中学生の表情や視線の観察、中学生へのプログラム後の聞き取り調査及びアンケート調査などを実施した。その結果、観察された子どもの集中度はハードウェアによる集中度評価アルゴリズムの値と一定以上の相関が見られた。 (3) 同生徒らに自然体験活動地の定点連続写真・録音を提示して自然体験活動の振り返り学習を行い、その際の省察的な反応を質問紙調査(選択式および自由記述式)により把握し、省察プロセスモデルについて検討した。同様の自然体験学習を行った小学生を対象とした調査データも含めて検討した結果、自然体験を教室内学習へ持続的に反映するために聴覚と嗅覚による体験が重要であることが示唆された。 (4) 気候変動学習に用いる定点連続写真・録音の取得を継続して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画のうち、最も要となる中学生の行動データ取得が、昨年度の試行により得られた知見も活かして順調に遂行できた。また、自然体験学習の後に続けて実施を予定していた振り返り学習も行い、生徒らの省察的な反応データも得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本調査対象生徒80名(2020年度は中学校第3学年)を対象に、気候変動関連学習として、自然体験活動地の定点連続写真・録音を用いた生物季節現象の観察学習を9月頃に実施する。この前後に質問紙調査(選択式)を行い、気候変動に関する行動意欲の向上などについて、前年に構築した省察プロセスを踏まえての分析を行う。また、気候変動学習の効果がどの程度持続しているかを追跡するために、2021年1月頃に再度、質問紙調査を行う。 以上により得られたデータについて、2019年度に開発した集中度評価アルゴリズムによる分析結果との関連性を分析する。これらの結果を英語論文にまとめ、環境教育関連の国際誌に投稿し、掲載を目指す。
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