研究課題/領域番号 |
18H01073
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
小堀 洋美 東京都市大学, 環境学部, 名誉教授 (90298018)
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研究分担者 |
横田 樹広 東京都市大学, 環境学部, 准教授 (00416827)
厳 網林 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (10255573)
桜井 良 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (40747284)
咸 泳植 東京都市大学, 環境学部, 准教授 (80613372)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生物多様性 / 市民科学 / 教育実践 / 国内外連携 |
研究実績の概要 |
大陸レベルの種の多様性の市民科学プロジェクトを推進するため、iNaturalistの日本への導入を試みた。国際連携により世界68の都市で同時開催したプロジェクト“City Nature Challenge(CNC)”では、東京のオーガナイザーとして、日本人の参加を容易にするマニュアルや情報を提供することにより、多くの市民・学生がプロジェクトに参加し生物種の写真、位置情報をアプリから送信し、国際的な生物多様性データベース(GBIF)に貢献した。参加国で情報量を競う等、情報共有し国内外連携を実行することができた。 河川の外来植物調査の市民科学プロジェクトを推進するため、企画したプロジェクトである“スマホを用いた多摩川水辺外来植物さがし”においては、参加者に調査地で同定した植物の群落特性、位置情報、写真をスマホで送信し、企画者はArcGIS上で収集したデータのマップ化・共有化がきるシステムとアプリを開発し、実践した。 プロジェクトの参加者にアンケートを実施し、共分散構造分析及びテキストマイニングよりプログラムの教育効果の把握を試みた。これらの市民科学プロジェクトを通して、市民や学生の生物多様性への意識改革を行い、市民科学が担う役割の重要性を認知する教育実践を行った。 グリーンインフラ形成のための市民科学プロジェクトでは、民有地の庭に注目し、雨水の水みち・浸透性と水に関わりのある生き物をセットで調査するための市民科学プログラムを開発した。 世界の市民科学の現状の把握と、日本と様々な国の市民科学団体との国際連携を目的として、北米を視察し市民科学に携わる多くの科学者と意見交換の機会をもち、今後の市民科学の発展に役立つ有益な情報を得ることができた。市民科学先進国である香港も視察した。これらの成果は、CitSci2019国際学会及び複数の国内学会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに順調に進展していると考える。 海外での視察では、有益な情報を多々収集でき、日本での現状も伝えることができた。2018年8月の北米視察は分担研究者の厳氏と実施した。特に、CNC2018’の2つの実施本部の一つであるロサンゼルス自然史博物館を訪問し、実施に当たっての共通及び日本固有の課題の検討を行った。また、セミナーでは2名が招待講義を行った。これらの成果を踏まえ、“CNC2018-Tokyo”を計画通り実施し、成果を収めた。また、2019年3月には、ワシントンDCのスミソニアンインスティテュート、連邦政府機関を訪問し、米国での多様なセクターで実施の市民科学プロジェクトの現状を視察すると共に、日本における市民科学プロジェクトへの関心・理解・支援を得ることができた。今後の日本でのプロジェクトには、海外からの参加・支援も予定しており、国内外連携の発展が期待できる。 Webを用いた河川の外来植物の市民科学プロジェクトは、分担研究者の咸氏と共に春と秋に実施し、計画通りの成果を得た。 市民科学プログラムの意義を明らかにするための社会科学的研究として、分担研究者の桜井氏は、CNC2018-Tokyoの参加者へのアンケート結果(n=105)及び世界都市共通アンケートの結果(n=113)を分析した。重回帰分析や自由回答記述の分析の結果、東京のプログラムの参加者は、自然への関心が高く、また国際的なプログラムであることを実感している参加者ほど満足度が高いことが分かった。世界都市共通アンケートの回答者は、プログラムに参加したことで環境保全に役立ったと実感できている人が東京の参加者よりも多かった。 グリーンインフラ形成のための市民科学プロジェクトでは、分担研究者の横田氏がWebを用いた民有地の庭を対象とした雨水の浸透性に関わる診断アプリを開発し、世田谷区でその有効性を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
大陸レベルの種の多様性の市民科学プロジェクトを推進する。大陸レベルで種の多様性のデータベースを提供するグローバルな市民科学プロジェクト“City Nature Challenge 2019”を世界の150か国以上で連携し、同時開催する。また、iNaturalistをプラットホームとした市民科学プロジェクトを日本及びパラオ共和国で企画・実践し、国際的な生物多様性データベース(GBIF)に貢献する。プロジェクト実施、必要なデータの精度保証、日本語及び実施場所(パラオ共和国)の言語による補助教材やガイドブックを作成し、プロジェクトを通して種の多様性の基礎情報を得る。 また河川の外来植物調査の市民科学プロジェクトを推進する。多摩川において水辺の国勢調査データを補完するため、プロジェクトの参加者に調査地で同定した植物の群落特性、位置情報、写真をスマホで送信してもらい、線的、面的な外来植物データを収集、分析する。企画者はArcGIS上で収集したデータをマップ化・共有化できるシステムとアプリを開発する。これらの成果から外来種の時空間的な分布と変動を把握する。 上記のプロジェクトの参加者アンケートを実施し、プロジェクトの評価、参加者の関心、学びを評価し、プロジェクトの改善に用いる。 さらに共生圏でのグリーンインフラ形成のための市民科学を推進する。また生態系のサービス機能を見える化できる指標の開発をおこなう。水循環と生態系ネットワークの再生を両立するGIを形成するために、水と生物の視点から市街地内の緑地の機能を評価する市民科学プログラムを集水域(世田谷区)のスケールで開発・実践する。特に民有地の庭や街路植栽に注目し、雨水の水みち・浸透性と水に関わりのある生き物をセットで調査するための市民科学プログラムを開発し、GIの視点で緑を再評価した情報基盤を創出する。
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