研究課題/領域番号 |
18H01078
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
唐沢 穣 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90261031)
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研究分担者 |
石井 敬子 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (10344532)
稲増 一憲 関西学院大学, 社会学部, 教授 (10582041)
笹原 和俊 名古屋大学, 情報学研究科, 講師 (60415172)
北村 英哉 東洋大学, 社会学部, 教授 (70234284)
鶴田 早織 (塚本早織) 愛知学院大学, 教養部, 講師 (80794073)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 偏見 / イデオロギー / 道徳意識 / ソーシャルメディア / マスメディア / 感情 / 文化 |
研究実績の概要 |
分断をあおるコミュニケーションの基礎にあると考えられる、道徳的判断や政治的イデオロギーの影響を明らかにするための、概念規定、研究方法の開発、それらに基づく試行的研究を行なった。心理学実験班では、活性化された道徳基盤が他者の行動の解釈に及ぼす影響を検証し、特に自動的・直感的な過程の影響が明らかになった。道徳意識と懲罰的判断に関するシナリオ実験では、当事者の背景属性情報、統制不可能性の認知、公正世界観などの影響を明らかにした。加えて、道徳判断の基盤となる新たな道徳基盤尺度を構成し、神聖・清浄基盤に焦点を当てた分析を可能にした。他に、作為・不作為に対する非難、国民意識に基づくイデオロギー的信念などについて研究方法を開発した。 ソーシャルメディア分析班では、半自動化処理を導入して道徳基盤辞書日本語版(J-MFD)を作成し、調査により得た自由記述データを分析して、妥当性を確認できた。また、#LGBTに関するTwitterのデータ(ツイート)にJ-MFDを適用して分析し、社会的対立に関する道徳基盤とその社会的ネットワークの構造を調査した結果、日本語での忠誠基盤ツイートの特徴や、リツイート・ネットワークに3つのクラスターがあることなどについて示唆的な結果を得た。 調査班では、人びとのマスメディアに対する認知のバイアスを明らかにするために3回のウェブ調査を行い、日本においても第三者効果がロバストな現象であることを確認、さらにこれがマスメディアを対象とした場合に顕著であることが明らかにした。また、報道番組、とくにソフトニュースに対する認知を検証するウェブ調査を行った。 文化班は、国際共同研究の体制整備にあたった。その一環として、国内外の中堅・若手研究者を招聘し、グローバル化と心理学の関係を論じる研究集会を開催し、文化、集団間葛藤、社会階層、社会的孤立等との関連について討論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各般の研究方法の整備に加えて、実証的知見を早くも蓄積しつつあり、今後もさらなる進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当年度に得られた研究手法や実証知見をもとに、より具体的な文脈での実証的検証を進める。例えば、日本社会における文化的規範から逸脱した行動をとる外国人と接触する場面を想定した実験により、異なる文化的背景と人物に対する感情反応や認知的な処理過程、さらには異文化接触に関わる受容過程を検証する。また、計算社会科学的手法の開発にも注力し、ソーシャルメディア分析だけでなく、イデオロギー的信念を題材としたシミュレーション研究なども試みる。調査研究、文化心理学的研究もいっそうの進捗を目指し、マクロレベルにおける心理過程の解明を進める。
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