研究課題/領域番号 |
18H01080
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
金政 祐司 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (70388594)
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研究分担者 |
島田 貴仁 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
荒井 崇史 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50626885)
相馬 敏彦 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (60412467)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DV / DaV / ストーキング / 夫婦関係 / 恋愛関係 / 縦断調査 / 愛着不安 / DTDD |
研究実績の概要 |
「親密関係での問題行動に関する前向き研究:暴力・ストーキングの連関とその動的リスク」への研究助成の初年度である平成30年度は、研究基盤を固めるための先行研究のレビューを入念に行うとともに、研究分担者と連絡を取り合いながら、2つの縦断調査を行った。 一つ目の縦断調査は、恋愛関係のDaV(デート暴力)を対象としたもので、現在恋愛関係ある者、男女1551名を対象として、まず第一波の調査を行い、その後、約半年の期間をおいて、第二波の調査を行った。その結果、667名からの回答を得ることができた。調査項目としては、①デモグラフィック項目、②パーソナリティ特性、③関係満足度、④ソーシャルサポートの程度、⑤関係特性、⑥関係内暴力加害・被害、⑦本人の適応状態等であった。加えて、現在、第三波の調査を実施中である。第一波と第二波の調査から得られた結果としては、愛着不安ならびにDTDD(ターク・トライアド)といったパーソナリティ特性は、後の恋愛関係における間接的暴力を増大させるという因果関係があることが交差遅延効果モデルならびに同時効果モデルの双方において示された。この結果については、現在実施中の第三波の調査を終えた後、同様の結果が示されるのかを確認しながら、今後、学会等で発表する予定である。 また、二つ目の縦断調査としては、上記のように縦断調査は、調査途中での離脱者が数多くいること、特に、恋愛関係が破綻したものに離脱者が多いことなどを踏まえ、ストーキングに関する縦断調査を行う場合には、第一波でかなり多くのサンプルを集める必要があるため、男女6000名を対象とした縦断調査を実施した。この調査については、第一波の調査を3月に終え、今後、3ヶ月毎に追跡調査を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、2つの縦断調査を開始し、一つ目の縦断調査については、第一波と第二波のデータを分析から、想定した結果が得られている。今後は、現在実施中の第三波の調査データを踏まえ、同様の結果が示されるのかを確認していく必要がある。また、ストーキングを対象とした縦断調査も第一波を3月に実施し、今後、3ヶ月毎に第二波、第三波の調査を実施する予定である。それらは、当初予定していたものであり、それゆえ、現段階としては、研究の進捗状況は、おおむね順調に進展していると言える。ただし、それらの調査データを分析し、結果をまとめるという作業については、多少遅れているところもあり、今後は研究時間の捻出を行い、研究結果をまとめて投稿論文や研究発表という形にしていく必要がある。また、夫婦ペア縦断調査についても、今後予定していることから、研究分担者と連携を取りながら、研究計画を固めていく必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、平成30年度に実施した恋愛関係のDaV(デート暴力)を対象とした縦断調査について入念な分析を行い、その結果をまとめて、学会等での発表ならびに学会誌への投稿を行っていく必要がある。また、第一波のデータを取り終えたストーキングに関する縦断調査についても、第一波のデータについての分析を行うと共に、第二波ならびに第三波の調査を実施していかなければならない。 ストーキングに関する縦断調査の第一波では、調査項目として、①デモグラフィック項目、②パーソナリティ特性(愛着不安ならびにDTDD)、③関係満足度、④ソーシャルサポートの程度、⑤関係特性、⑥関係内暴力加害・被害、⑦援助要請スタイル等を用いた。今後、実施する第二波、第三波の調査では、恋愛関係が継続している者については、再度上記の調査項目への回答を求め、恋愛関係が破綻した者には、①パーソナリティ特性(愛着不安ならびにDTDD)、②ソーシャルサポートの程度、③関係破綻後の感情や思考、④関係破綻後の行動、⑤ストーキング的行為の加害・被害等の調査項目への回答を求める。これまでの国外の研究(Coleman, 1997, Dye & Davis, 2003, Katz & Rich, 2015)では、パーソナリティ特性や関係破綻前の関係内での暴力加害・被害が、その後のストーキング的行為のリスク要因となり得ることが示されている。それゆえ、本研究では、それらの調査データから、第一波でのパーソナリティ特性(愛着不安ならびにDTDD)や関係内での暴力加害・被害、また、破綻前の関係特性が、第二波ならびに第三波における恋愛関係が破綻した者のストーキング的行為の加害・被害を予測し得るのかについて分析、検討を行っていく予定である。
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