研究課題/領域番号 |
18H01080
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
金政 祐司 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (70388594)
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研究分担者 |
島田 貴仁 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
荒井 崇史 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50626885)
相馬 敏彦 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (60412467)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DV / DaV(デート暴力) / ストーキング / 夫婦関係 / 恋愛関係 / 縦断調査 / 愛着不安 / ダークトライアド |
研究実績の概要 |
本研究「親密関係での問題行動に関する前向き研究:暴力・ストーキングの連関とその動的リスク」は、夫婦関係や恋愛関係といった親密な関係における暴力(Intimate Partner Violence;IPV)ならびに親密な関係破綻後のストーキングに関する短期的ならびに長期的な予測因子(危険因子・防御因子)を特定することを目的としたものであるが、研究助成の3年目となる令和2年度は、COVID-19の拡大により緊急事態宣言が発令される等、私たちの生活スタイルが激変した。それゆえ、当初の研究計画を多少修正し、COVID-19による生活環境の変化がIPVを増大させているという諸外国の報告を受けて、本邦においても、COVID-19が夫婦関係の関係性やIPVに及ぼす影響について検討するため、2020年の4月上旬から半年間にわたって、夫婦関係のペア調査を3度にわたって実施した。その結果、関係満足度や接近コミットメントは、夫婦ともにCOVID-19の流行までは減少していたが、COVID-19の流行後は妻が増加傾向を示し、夫は変化しなくなっていることが示された。また、夫婦関係の心理的なIPVについては、収入が減少した夫婦は、収入の変化がなかった夫婦と比べ、心理的IPV被害・加害ともに緊急事態宣言下において高かったことが示され、経済的な脆弱さとIPVとの関連を示唆する結果であった。これらの結果については、学会等において発表され、また、学会誌に投稿中である。 また、これまでに実施していた恋人関係と夫婦関係についての2つの縦断調査に関しては、恋愛関係と夫婦関係の双方の関係において、パーソナリティ特性である愛着不安が、後のIPVの増大を予測していることが示され、この結果は、査読付きの学会誌、心理学研究に掲載が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、COVID-19の拡大により緊急事態宣言が発令される等、私たちの生活スタイルが激変したことから、データに歪み生じる懸念があるため、当初の研究計画を多少修正せざるを得なかった。本年度は、COVID-19が夫婦関係の関係性やIPVに及ぼす影響について検討するため、2020年の4月上旬から半年間にわたって、夫婦関係のペア調査を3度にわたって実施したが、COVID-19による生活環境の変化という予期せぬ状況下における研究結果が、平常時にまで一般化できるものなのかについては、今後の検討課題として残っている。それゆえ、COVID-19による生活環境の変化がある程度落ち着いた後、再度、調査を実施する必要がある。このことから、研究の進捗状況は、やや遅れていると言える。 また、COVID-19による生活環境の変化という自体を受けて、恋愛関係でのIPVに関するペア縦断調査については、本年度は、断念せざるを得なかった。それは、夫婦関係と比較して、関係が脆弱である恋愛関係は、COVID-19による生活環境の変化の影響を多分に受ける可能性があるため、データに歪み生じやすいと考えたからである。それゆえ、COVID-19による生活環境の変化がある程度落ち着いた後には、恋愛関係におけるIPVについてのペア縦断調査を実施する必要があり、この点についても、研究の進捗状況は、やや遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、恋愛関係でのIPVに関するペア縦断調査に実施予定であったが、COVID-19の拡大の影響から、新たに恋愛関係のペア縦断調査を実施した場合、データに歪みが生じてしまう可能性を考慮し、調査の実施を断念せざるを得なかった。それゆえ、今後は、恋愛関係でのIPVに関するペア縦断調査を実施していく必要がある。また、これまで実施した調査の結果については、学会での発表ならびに国内・国外の学会誌に投稿を行っていく必要がある。
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