研究課題/領域番号 |
18H01082
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
氏家 達夫 放送大学, 愛知学習センター, 特任教授 (00168684)
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研究分担者 |
伊藤 大幸 中部大学, 現代教育学部, 講師 (80611433)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ストレス / 不安 / 親 |
研究実績の概要 |
研究計画に従い、福島県県北、県中、いわきの地域の中心都市の教育委員会の協力を得ることを試みた。しかし、いずれの教育委員会からも協力を得ることができず、研究計画の修正が必要となった。変更点は、次の2点であった。1つ目は、対象地域を、相馬地区に変更した。福島県教育委員会相双教育事務所の協力を得て、相馬地区の4つの市町村の教育委員会に協力を要請した。その結果、3つの市町村の教育委員会の協力を得ることができた。2つ目は、この年度の調査開始を断念し、調査は、次年度早々、対象児童が2年次になった時点で実施することとした。さらに、災害の影響がまだ強く残っていたと予想される2012年度生まれの子どもたち(次年度の1年生)を研究対象に加える(対照群となる)ことで、胎内および出生後の親の不安やストレスの効果をより検出しやすくなると判断した。そこで、この年度は、調査対象となる学校の確定と本研究課題を実施するために必要な検査用具等の整備を行った。 原子力災害が子どもの発達に及ぼした影響についての文献研究を行った。これまで、原発事故の影響についての研究知見は、英文誌に掲載された論文に限定されていた。今年度、これまでわが国に知られていなかったウクライナ語で発表された論文を日本語訳し、その内容についてのレビューを行った。ウクライナで行われた10年間の縦断研究によれば、放射線被ばくや避難による身体的変調と心理的不調が循環的にそれぞれの問題を増幅していることが明らかになった。そこには、子どもの健康に対する親の不安が強く関与していた。また、子どもに対する家族の保護機能が、事故の影響で弱められることを示唆した研究も行われていた。これらの知見は、親のストレスにより子どもの適応上の問題が誘導されることを強く示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予定していた3市の教育委員会の協力が得られなかったため、今年度に予定していた調査を開始できなかったことから、研究計画の進捗に1年の遅れが発生してしまった。
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今後の研究の推進方策 |
対象地区を相馬地区に変更し、調査対象を2011年度生まれだけでなく2012年度生まれの子どもに拡張する。このような研究計画の変更により、この研究課題の目的達成に大きな支障はないと考えている。先行研究と比較して、2年生になった時点からの追跡調査開始でも十分に早い時期といえるからである。さらに、2012年度生まれの子ども(次年度の1年生)を調査対象に加えることで、胎内および出生後の母親のストレスをさらに幅広く分散させることができる。元の研究計画では、母親のストレスを地理的条件の関数ととらえることにしていたが、まだ大震災の影響が強く残っていた2011年の間に妊娠した2012年度生まれの子どもを調査対象に含めることは、子どもの心理機能の発達に対する胎内および出生後の母親のストレスの影響を検討するためのメリットになると考えている。 次年度早々に相馬地区の3市町村の小学校で調査を開始するための各自治体の教育委員会との調整や、調査にに津ような検査用具等の準備をすでに終えている。次年度早々に調査を実施することが可能となっている。 調査サンプルの代表性を高めるために、福島県北の自治体と隣県である宮城県の自治体の協力を得るための交渉を継続している。
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