研究課題/領域番号 |
18H01083
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森口 佑介 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (80546581)
|
研究分担者 |
原田 知佳 名城大学, 人間学部, 准教授 (00632267)
篠原 郁子 国立教育政策研究所, 生徒指導・進路指導研究センター, 主任研究官 (30512446)
満石 寿 京都学園大学, 健康医療学部, 講師 (30612915)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 実行機能 / 養育行動 / 向社会行動 / 幼児 / 発達認知神経科学 |
研究実績の概要 |
実行機能とは,目標到達のために行動を制御する能力である。本研究では,発達認知神経科学的手法を用いて,乳幼児期の養育行動が幼児期の実行機能の発達を介して子どもの後の社会的行動に寄与するプロセスを明らかにする。具体的には,第1に,養育行動が,子どもの動機付けやストレス反応を介して実行機能の神経基盤である外側前頭前野の働きに影響を与える過程を解明する。第2に,実行機能が社会的場面における自己制御行動を介して,向社会的行動に寄与する過程とその神経基盤を解明する。 1つ目の目的に関して,今年度は,支援的養育行動が子どもの課題への動機付けを高める点を検討した。具体的には,幼児を対象に,Go/Nogo課題時における,動機付けと外側前頭前野の活動や実行機能との関係を探った。Go/Nogo課題では,ある刺激(ゾウ)が提示されたら反応(Go試行)をし,別の刺激の場合(ライオン)は反応をしてはならない(Nogo試行)。この課題において,正答すれば,社会的報酬として養育者の笑顔写真,不正答ならば中立顔写真が提示された。脳活動は近赤外分光法(NIRS)を用いて外側前頭前野の活動を計測した。その結果,親が支援的養育行動をしていると,養育者の笑顔写真を見る際に,子どもの外側前頭前野の活動が強いことが示された。この結果は我々の仮説を支持する。 2つ目の目的に関して,今年度は,幼児期の実行機能と社会的行動との関連について予備的に検討した。具体的には,実行機能が子どもの向社会的行動に寄与するかを検討した。幼児は,実行機能課題もしくは統制課題を与えられ,そのあとに向社会的行動課題を与えられた。もし実行機能が向社会的行動に寄与しているなら,実行機能課題後に向社会的行動が影響を受けるはずである。実験の結果,実行機能課題後に,向社会的行動が減ることが示された。この結果は,我々の仮説を支持する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は概ね計画通りに進展している。 1つ目の目的に関しては,研究初年度に支援的養育行動が子どもの実行機能に与えるプロセスを解明する計画であったが,行動実験および脳機能計測実験を行ったところ,実験の結果は我々の仮説を支持しており,予定通りに進展している。 2つ目の目的に関しても,幼児において実行機能と社会的行動の関係を予備的に検討することが目的であったが,こちらも概ね仮説通りの結果が得られている。次年度には,脳機能計測を用いて本実験に進む予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,以下のように研究を進展させる。 まず,1つの目的に関しては,管理的な養育行動が実行機能に与える影響を検討する。本研究では,管理的養育行動が,子どものストレス反応を媒介して,前頭前野の機能に影響を与えるという仮説を検証する予定にしているが,ストレス反応の計測については慎重に進める予定にしている。そのため,まず,成人を対象にストレス反応と実行機能の関係を検討し,そのうえで,子どもを対象にした予備的検討を実施したいと考えている。 2つ目に関しては,研究初年度に実行機能と向社会的行動が関係するという予備的な証拠を得たため,両者の関係について,脳機能計測を用いた本実験を実施する。また,実行機能と社会的自己制御の関係について,予備的な検討を実施する。
|