研究課題
思春期コホートでは、一昨年来実施している小学5,6年生の双生児を対象とした郵送による質問紙調査(60組)と、その一部の双生児(30組)に来校調査による発達調査を行った。統計的な分析に耐えるサンプル数に達した段階で心理・行動変数(認知能力、学業成績、自己制御能力、文化的関心、社会性、職業興味、主観的幸福感、パーソナリティ、問題行動など)で遺伝と環境の相関・因果関係を単変量遺伝分析を行ってモデル化するためのデータ収集の作業を着実に進めることができている。これらはさらにすでに蓄積された過去の数時点間のデータとあわせて、個人内変化に及ぼす遺伝、共有環境(家族環境)、非共有環境(個人に特有の環境)の寄与率を推定することや、複数の変数間(行動変数間や、心理・行動変数と教育的・社会的変数間)で遺伝と環境の相関・因果関係を多変量遺伝分析を行ってモデル化する。これによって変数ワイズで見たときの「絶対優位による個性」の要因を明らかにする。さらに個体ワイズの比較優位についても、諸変数のプロフィールを用いてタイプわけし、そのペア内の類似度を数値化して検討する。成人期コホートでは、認知能力とパーソナリティに顕著な差異のある不一致一卵性双生児1エピゲノム(DNAメチル化)の差異と脳機能(fMRIによるresting state)の差異を明らかにし、それらと既存の心理・行動データとの関連性を検討することをめざし、特に女性一卵性双生児にターゲットを絞って協力者を募った。これまでに質問紙で調査を実施した社会達成(職業興味、職業達成、収入、趣味、社会性、主観的幸福感など)や社会環境(職場・家庭・地域環境)に関するデータにおいて、十分なデータ数に達していないものについて、追加調査を実施する予定であったが、これは来年度に持ち越した。。
2: おおむね順調に進展している
思春期コホートの発達調査、質問紙調査は順調にその参加者数を増やしつつある。成人期コホートの脳画像・遺伝子検査への参加者数が、予定を下回っているが、認知能力、パーソナリティに加えて、向社会性について追加調査を開始し、状況の改善に向っている。
思春期コホートは昨年度、必要なデータ数におおむね達したが、まだ追加できる参加者が予定されているので、新型コロナ感染症が収束し次第、調査を開始する。それによって縦断研究の性質を生かした発達的変化に関する統計的分析に取り掛かることができる。成人期コホートは、昨年から開始した向社会性の脳画像に焦点をあてた追加調査を継続し、これとこれまでのエピゲノム調査を融合させてデータの拡充を図る。またデータ収集の効率化のために、先行研究を精査し、必要不可欠な変数に絞る。こうして既に収集したデータから、家庭や学校の教育環境と社会達成との遺伝的・環境的因果モデルを構築し、さまざまな仮説の検証に取り掛かる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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