研究課題/領域番号 |
18H01089
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
遊間 義一 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70406536)
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研究分担者 |
金澤 雄一郎 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50233854)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 性犯罪受刑者 / 性犯罪抑止プログラム / 生存分析 |
研究実績の概要 |
2018年度は,性犯罪受刑者の異質性について,犯罪経歴や罪名に基づく分類と,再犯リスク尺度を用いた分類の両者の視点から検討を行った。前者については,刑務所に入所する原因となった犯罪が痴漢の者とそれ以外の者とで,性犯罪抑止プログラムの効果が大きくことなることを確認した。すなわち,痴漢で入所した者については,再犯率は高いもののプログラムの抑止効果は高く,逆に,非痴漢で入所した者では,再犯率は低いもののプログラムの再犯抑止効果は認められないことが分かった。この結果については,6月30日にカナダ・モントリオールで開催された第29回国際応用心理学会の大会で,研究分担者らと連名で,「On the Effects of Japanese Sex Offender-Treatment Program: Is there a good match between the offenders and the treatment?」と題する口頭発表を行って公表した。 他方,再犯リスク尺度を用いた分類による異質性については,受刑者処遇の世界標準ともなっているRNR原則に基づき,性犯罪受刑者を,高リスク,中リスク,低リスクに分類し,このうち標本数が一定数以上ある高リスク及び中リスク群に対する性犯罪抑止プログラムの効果をみたところ,高リスク群では抑止効果が認められたが,中リスク群では抑止効果が認められなかった。この結果は, 11月6日に,米国・アトランタで開催された第74回アメリカ犯罪学会において,研究分担者らと連名で,「Effects of Japanese Sex Offender-Treatment Program」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は,現在日本の刑務所で行われている性犯罪抑止プログラムと受刑者のタイプの交互作用を見いだし,より効果的な組み合わせを見いだすことである。 2018年度は,先行研究,理論及び予備分析において性犯罪受刑者に対する性犯罪抑止プログラムの効果に影響を与える可能性のある2つの要因,すなわち痴漢か非痴漢か,性犯罪再犯リスクが高いか低いか,に関して検討を加えた。その結果,2つの要因ともに処遇効果に影響を与えていることが分かった。以上から,おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度までに,1)刑務所への入所の原因となった犯罪が痴漢か否か,及び2)再犯リスクが高いか,低いかの2要因によって,日本の刑務所で行われている性犯罪抑止プログラムの効果が異なることが分かった。今後は,これら2要因の組み合わせと,性犯罪抑止プログラムの交互作用について検討を行う予定である。 また,再犯リスクについては,現在まで,高リスクと判定された者と,中リスク判定された者しか扱ってこなかったが,今後は低リスク判定された受刑者についても,解析手法を工夫するなどして,評価を行いたい。 さらに,性犯罪抑止プログラムについても,昨年度までは,高密度処遇の実施・未実施,中密度処遇の実施・未実施しか検討してこなかったが,今後はそれぞれの処遇密度の短縮版を実施した受刑者に対する犯罪抑止効果についても評価する予定である。
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