研究課題
本プロジェクトの目的は、ストレス関連精神症状の軽減を目指した情動記憶の符号化に働きかけるプログラムの開発・効果評価、そして神経作用機序の解明である。これまでに適格基準を満たした参加者100名以上からデータを収集している。また複数の認知課題を用いて予備的に検証した結果、特定の課題においてストレス関連精神症状と強い関連がみられた。このデータから記憶機能に働きかける新たな介入プログラムの開発を行った。これまでに本研究で得られたデータをもとに、幾つかの主要な研究成果を発表した。成果のうち一つは、不安障害に対するハイリスクを有する者では情動的にネガティブな情報に対する記憶の記銘が強まりやすいのに対して、ポジティブな情報に対する記銘は弱くなりやすいこと、そしてこうした現象の背景には、中枢神経系の扁桃体外側基底核と膝下前帯状皮質の機能結合が密接に関連していることを見出したことである。また別の成果として、代表的なストレスホルモン・コルチゾールが視空間記憶の想起を損ない、この効果が海馬と外線条皮質の機能結合によって完全に媒介されていたことを見出したことである。これらの成果は、Biological Psychiatry: Cognitive Neuroscience and NeuroimagingやPsychoneuroendocrinologyといった臨床認知神経科学および精神神経内分泌学の名誉ある国際学術雑誌に原著論文として掲載された。本プロジェクトにおいて開発した認知介入プログラムは世界でも初めての試みであり、その効果が示されれば、今後不安障害やうつ病などストレスに関連した精神障害の治療・予防に大きく貢献することが期待される。
2: おおむね順調に進展している
当初の予想に反してパラメータの決定に時間を要したが、概ね順調に計画は進行している。
コロナウィルス発生に伴う不透明さはあるものの、夏から介入試験のリクルートを開始する。新聞広告やインターネット広告等のリクルートを強化し、より多くの参加者を募ることができるよう努める。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
Biological Psychiatry Cognitive Neuroscience and Neuroimaging.
巻: 5 ページ: 301-310
10.1016/j.bpsc.2019.11.008. Epub 2019 Nov 27.
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 3151
10.1038/s41598-020-60096-1.
Psychoneuroendocrinology
巻: 109 ページ: 104310
10.1016/j.psyneuen.2019.04.013. Epub 2019 Apr 24.