研究実績の概要 |
本研究は、否定的な情動刺激に対する偏った情報処理を緩和することでストレス関連精神疾患の治療を目指す「認知バイアス緩和アプローチ (Cognitive Bias Modification: CBM)」に着目し、その中でも相対的に研究が進んでいない記憶バイアスに焦点を当て、記憶バイアス緩和を図る「記憶バイアス緩和プログラム」の開発を行い、その効果について多角的に検証することを目的とした。本研究期間に、関東近郊に居住する主要な医学的疾患および精神疾患を持たない212名よりデータ収集を行った。そのうち介入研究への適格基準を満たした60名の高リスク者に対し、本介入プログラムを1ヵ月間実施した。本研究プロジェクトのベースライン時点のデータをもとに解析された研究結果について、主に、1)高リスク者にみられる幾つかの記憶バイアス(ネガティブな情動情報に対する選好的な符号化および想起、自伝的記憶の概括化)とその神経生物学的相関、2)高リスク者で多く見られる幼少期被虐待経験の神経生物学的相関(特にインターロイキン6の分泌変異に示唆される免疫系制御の破綻)、3)情動認知処理と免疫系(インターロイキン6)、抑うつに対する心理社会的ストレッサーと遺伝の相互作用、について、Biological Psychiatry: Cognitive Neuroscience & Neuroimaging, Psychoneuroendocirinology、Brain, Behavior, and Immunity、Frontiers in Neuroendocrinologyといった信頼ある国際学術誌を含めて、計6本採択された(いずれも筆頭/責任著者として)。介入データについては現在解析中であり、本プロジェクトの研究期間は終了するが、公表に向けた準備を進める。
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