研究課題/領域番号 |
18H01095
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
田島 美幸 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, 客員研究員 (40435730)
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研究分担者 |
藤澤 大介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (30327639)
岡田 佳詠 国際医療福祉大学, 成田看護学部, 教授 (60276201)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 認知症 / 家族介護者 / 認知行動療法 |
研究実績の概要 |
日本では日常生活自立度Ⅱ以上の認知症患者のうち、半数が居宅にて介護が行われている。認知症の家族介護者に対する精神的なケアの向上が喫緊の課題であるが、その手法は十分に検証されていない。そこで本研究では、訪問看護師が訪問時に実施できる簡易型の家族介護者向けの認知行動療法プログラムを作成し、その有効性を検討する。本年度は下記の2点を実施した。
1.訪問看護師が訪問時に実施する認知行動療法プログラムの実施可能性・安全性の検討 研究デザイン:対照群を設けない単群の前後比較試験。セッティング:都立松沢病院物忘れ外来および世田谷区内の訪問看護ステーション(4施設)。研究対象者:20歳以上80歳未満で認知症の親族と週10時間以上生活を共にする者。目標症例数:20例。研究アウトライン:①上記セッティング施設を利用する家族介護者に研究チラシを配布する。②研究コーディネーターが対象者の選定基準を確認し、説明同意と事前評価を行う。③評価は介入前、中間時点、介入後、介入終了後3か月に行う。④介入実施者(訪問看護師)が家族介護者にプログラム(30分×11回)を実施する。評価方法:手法評価項目はZarit介護負担尺度日本語版で測定する介護負担感、副次的評価項目は家族介護者の精神症状および認知症患者の周辺症状等とする。 2.上記プログラムの普及・啓発に向けた看護師等の支援者研修の実施と効果測定 本研究の介入実施者となる訪問看護師に対して、講義とスーパービジョンによる認知行動療法教育を実施し、認知療法尺度等を用いた評価により学習効果を測定する。具体的には、介入前に集団教育を行い、講義や演習、ロールプレイング等による学習を図る。介入中は、訪問看護師の面接を録音し、スーパーバイザーは週1回、録音に基づいたスーパービジョンを行う(11回)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究①では、英国のCoping strategy program(START)のテキスト・マニュアルの翻訳を行い、介入に用いるテキストとワークシート、介入者マニュアルを作成し冊子化した。また、国立精神・神経医療研究センターの研究倫理申請(A2019-049)および協力施設の倫理審査の承認を済ませた。2018年4月に介入実施者である訪問看護師を対象に「認知症の家族介護者を対象とした認知行動療法」に関する研修を実施した。2018年5月より本研究の介入を開始し、2019年3月時点で3名の登録を完了した。
研究②では、介入を実施した訪問看護師が適切に認知行動療法を実施できるように、全介入実施者(訪問看護師)の11回の面接について、認知行動療法の専門家が録音に基づいたスーパービジョンを行った。 その他、同プログラムの普及啓発を図ることを目的に、認知症患者や認知症家族介護者のケアに携わる地域包括支援センター、認知症疾患医療センター等の職員を対象に認知行動療法研修を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究①の前後比較研究では、2019年度も継続して研究登録を進める。また、介入実施者である訪問看護師に対するスーパービジョン教育も継続する(研究②)。その他、テキストやワークシート等の教育資材を書籍化し、介護ストレスを抱える家族介護者に対して、介護ストレスに対する対処法を広く伝達できるよう努める。また、第19回日本認知療法・認知行動療法学会(2019年8月)では、「認知症の家族介護者を対象とした認知行動療法」に関するワークショップを企画し、医療・社会福祉領域のスタッフを対象に研修を実施する予定である。
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