研究課題/領域番号 |
18H01098
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123)
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研究分担者 |
小川 健二 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (50586021)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 運動主体感 / 予測誤差 / 計算モデル / 心理実験 / 脳活動計測 |
研究実績の概要 |
人間が身体を動かすとき「体を動かしているのは自分である」という感覚を得る.これは運動主体感と呼ばれる.これまで「運動結果の予測」と「実際の運動結果」とのずれ(予測誤差)が,主体感を決めるといわれてきた.この仮説は,統合失調症の妄想・幻覚なども説明しうる仮説として注目されている.本研究課題は,予測誤差がどのようなプロセスを経て主体感に至るのか,そのメカニズムと神経基盤を解明することを目的とする.2018年度は,1)運動主体感の基礎的なプロセスを調べるために,コンピュータ画面に表示される運動が,自分の運動か他人の運動なのかを曖昧にした実験状況を作り,行動データから推定した予測誤差と,運動の自他帰属の関係をモデル化することを開始した.2)運動の自他帰属を実験的に操作することで,運動そのものにどのような影響を与えるかを調べた.その結果.1)予測誤差は運動の自他帰属に影響を与えるが,確率的に曖昧な過程を含んでいることが解り,その過程をモデル化することが重要であることが解った.2)被験者に自分の運動であったかどうかを判断させ,その判断に「正しい」「間違い」というフィードバックを与えることによって,運動主体感を操作する(バイアスを与える)と,運動そのものが変化することが解った,この結果は,高次認知による判断が,予測誤差などの感覚運動情報に影響を与えることを示唆しており,予測誤差が運動主体感に影響を与えるだけでなく,運動主体感が予測誤差にも影響を与え得ることを示唆していた.その他,予測誤差と運動主体感の間をつなぐ神経基盤を調べるために,脳の領域の結合性を解析する技術の開発,基礎的な運動機能と認知機能の関係を調べる実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は,主に予測誤差と運動主体感の関係をモデル化を開始し,基礎的なデータを蓄積した.当初予想していたよりも,複雑な確率過程が含まれていることが解った.予測誤差と運動主体感の影響関係が,双方向性であることも解り,モデルの構造を決める上で重要な発見となった.脳の機能的な結合を調べるため解析手法の確立でも進展が見られた.
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今後の研究の推進方策 |
予測誤差と運動主体感の関係性を調べるための基礎的なデータが充分蓄積されたので,次年度以降ではモデルを確立するとともに,脳活動計測を行い,予測誤差と運動主体感をつなぐ神経基盤を解明するために,モデルに基づいた脳活動解析を行う予定である.
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