| 研究課題/領域番号 |
18H01099
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| 研究機関 | 東京大学 |
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研究代表者 |
村上 郁也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60396166)
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| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 実験系心理学 / 認知科学 |
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| 研究実績の概要 |
周辺視においては、視覚刺激の物理的呈示位置を示す入力情報の空間分解能や感覚証拠が乏しいため、他の手がかりと組み合わせて事物の位置推定がなされなければならない。しかし、それらの推定作業の詳細は未知である側面が多い。そこで今年度は、局所的な視覚刺激位置とそこに含まれる運動信号を入力情報として、大局的な形状知覚の成立への計算がなされる過程を明らかにし、視覚システムにおいて運動と位置の相互作用に関わる階層的情報処理の構造についてモデル化することを目的として、健常成人の実験参加者において数々の視覚心理物理学的実験を実施した。そのひとつとして、局所的にコントラスト変調窓を空間的に固定し、輝度の搬送波をその空間窓内部で一方向に流動させるという視覚刺激要素を使用し、多数のそうした視覚刺激要素を整列配置してできる大局的形状が運動信号の存在によってどのような影響を受けるかに関して実証研究を行った。具体的には、運動信号の存在によって局所的視覚刺激要素の見かけの位置がずれて感じられるように設定し、多数の視覚刺激要素においてそれらの見かけの位置が系統的にずれて感じられるような刺激布置にした結果、見かけ上の大局的な形状が物理的配置に対して例えば縦長にゆがんで感じられるようにした。この図形を視野周辺に配置して長時間観察することにより、物理的には方形配置でありながら知覚的には図形に系統的なゆがみが感じられるという状態に対して、順応実験を行うことが可能になる。そうした結果、知覚的に縦長にゆがんだ形状に順応した後には方形配置の図形が横長に感じられるという陰性残効が頑健に観察された。このことから、動的な信号の存在下で視野周辺の局所的位置と大局的位置との不整合が生じる状況を実験的に作り出した結果、運動による知覚的位置ずれの処理過程が大局的図形形状の処理過程に対して入力信号を送っている心理物理学的証拠が得られた。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、初年度以来のさまざまな環境整備の結果として、上記の研究実績概要のほかにも多数の並列的な実験作業を遂行することができた。上記の研究実績概要は国内外の学会にて研究発表済で、そのうち国内学会の日本視覚学会での発表内容に対して、第一著者が「日本視覚学会ベストプレゼンテーション賞」を受賞するに至ったことは、研究の順調な進展のひとつの証左として挙げられる。また、視野周辺における色と運動の結びつけ錯誤、視野周辺の多物体運動の追跡課題のパラダイムでも興味深い複数属性間相互作用の知見が得られてきており、統合的な解釈のできる可能性が広がってきている。
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| 今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究成果がまとまり国内外の学会にて公表がかなった一方で、原著論文の出版に向けて次年度に課題がもちこされ、また同時並行して進めている複数研究プロジェクトのうちでは、さらなる発展が必要なために、いまだ研究成果の発表に至っていないものもある。今後は、本年度の研究内容を総括してあぶり出した課題を克服し、発展実験を実施して研究成果につなげるために、本年度の路線を踏襲しながら新たな実験研究を行っていく。これまでの現象観察では、視野周辺のランダムな位置に配置した視覚刺激要素を同時に観察する作業の中で、特定の刺激要素に選択的注意を払うことで位置知覚に対して促進的影響が生じることがわかり、このことから、特定の刺激要素群に対して分散的な注意を払うことで位置知覚あるいはその他の属性の知覚にどのような影響が生じるのかについて、研究興味が増してきている。視野周辺の要約統計量を計算する処理過程に関連すると考えられるアンサンブル知覚の特性について、位置知覚あるいはその他の属性の知覚に対して運動信号がどのように影響を及ぼすか、運動の有無だけでなくどの運動に注意を向け続けるかといったトップダウンのプロセスも操作変数に組み入れていきたい。研究を遂行する上で、博士研究員あるいはリサーチアシスタントなど、科研費での雇用が可能な人的資源の確保も引き続き積極的に活用する。そうした者をはじめ大学院生等を研究協力者として研究推進の原動力とするほか、実験参加者への謝金の支出や、必要であれば共同利用研究施設等の借上げなどをして、安定的な行動実験および認知神経科学的実験の環境を維持・発展する。
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