研究課題/領域番号 |
18H01110
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古庄 英和 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (60377976)
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研究分担者 |
田坂 浩二 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (30780762)
大野 泰生 東北大学, 理学研究科, 教授 (70330230)
安田 正大 北海道大学, 理学研究院, 教授 (90346065)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多重ゼータ値 / モチヴィックガロ群 / ダブルシャッフル関係式 / Teichmuller-Legoの哲学 |
研究実績の概要 |
新しい研究としてl-進超幾何関数なる超幾何関数のl-進エタール類似を導入して研究を始めた。この関数に対してGaussの超幾何定理のl-進類似及びEulerの変換公式の類似を証明した。 前年度から開始した正標数の多重ポリログの解析接続についての研究も続行した。Artin-Schreir方程式を使って正標数の多重ポリログ関数の定義域を全空間まで広げて解析接続することを示し、新しく導入したモノドロミー加群の概念を用いて論文を整備し改訂した。この論文はTunisian Journalより掲載が決まった。Associator関係式(associatorsの定義関係式)と合流関係式が同値になるという論文を査読者の意見に基づいて論文を改訂した。 査読に何年もかかったがようやく掲載Amer.J.Mathにて掲載されることになった。Komiyama氏との共著を大幅に書き直した。最初の版でmouldsで記述した議論はすべてbimouldsに一般化した。この論文ではKashiwara-Vergneリー代数をEcalleのmould理論を用いた再解釈を与え、これよりこれの二重次数版からGoncharvのdihedralリー代数への埋め込みを実現している。この論文はAnn.Fac.Sc.Toulouseより掲載が決まった。Enriquez氏と共同で行なっている多重ゼータ値のdouble shuffle関係式に関するRacinetの理論のBetti側の理論に関するシリーズ共著3本の最初の一編目はSelecta.Mathより掲載されることになった。この一連の研究が終わってから、調和余積から定まる2種類の固定化部分群が一致しさらにそれらがRacinetのダブルシャッフル群とも一致するという結果が得られたので新たな共著論文を執筆した。分担者の田坂氏は、純奇多重ゼータ値の次元関連する行列のランクに関するBrownの予想についての肯定的な結果を提示した。また大野氏は中筋氏との共同研究により、多重ゼータ値の双対公式および一般化双対公式をSchur多重ゼータ値へ拡張することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のために直接対面で研究討議する機会が減ったために全体的に研究速度が緩かったと思う。シリーズ論文「The Betti side of the double shuffle theory、 I ,II, III」が長大であったせいか査読に思いの外時間がかかり長く待たされた。待っている間にこのシリーズ論文の大規模改訂を数回行ったためにさらに査読を長引かせることになってしまったのも一因であろう。上述の通り、この研究の続きとして調和余積から定まる2種類の固定化部分群が一致しさらにそれらがRacinetのダブルシャッフル群とも一致するという結果が得られたので新たな共著論文「The stabilizer bitorsors of the module and algebra harmonic coproducts are equal」を執筆したが、この論文での議論と記号に合わせるために先のシリーズ論文を書き直さなかればならなくなったことがこの大規模改訂の要因である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍が落ち着き次第、今まで不自由していた対面での研究交流を積極的に図っていく。新たな共著論文「The stabilizer bitorsors of the module and algebra harmonic coproducts are equal」で行っている議論が複雑すぎているため、議論を見通し良く整備して論文をより読みやすくする必要がある。 私が論文「The $\ell$-adic hypergeometric function and associators」で導入したl-進超幾何関数が、超幾何関数の全うな類似と皆に納得してもらえるよう、超幾何関数たるべき性質をさらに探し出してい可なければならない。また有限超幾何関数やDworkのp進超幾何関数との関係は現時点では全く不明であり、この二つの関連を探ることは重要な課題である。 多重ゼータ値の研究においてmould理論は今後重要性が高まるであろう。さまざまな研究者達が使えるように、正しい定式化を与えながら理論の整備を続けていく。
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