研究課題/領域番号 |
18H01111
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 耕二 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (60192754)
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研究分担者 |
見正 秀彦 東京電機大学, システムデザイン工学部, 教授 (10435456)
鈴木 正俊 東京工業大学, 理学院, 准教授 (30534052)
小森 靖 立教大学, 理学部, 教授 (80343200)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ゼータ関数 / L関数 / 多重ゼータ関数 / 特殊値 / 離散普遍性 / 混合普遍性 / ルート系のゼータ関数 / Schur 多重ゼータ関数 |
研究実績の概要 |
今年度に大きく進展した研究の一つは、Schur 多重ゼータ関数に関するものである。いわゆる anti-hook タイプの Schur 多重ゼータ関数が、ルート系のゼータ関数を用いて表示できることの証明が完成し、論文にまとめて投稿した。またその表示自体が、Bump たちの言うところの Weyl 群多重 Dirichlet 級数のある種の類似になっていることにも気づいた。いずれも表現論的な背景を持つ、こうした三種類のゼータ関数の間に明示的な関係があることは今までには気づかれていなかったことである。 ルート系のゼータ関数についてはさらに、今までの成果を体系的にまとめた著作の執筆が進行中であり、基本的な骨組みは年度中にひとまず仕上がった。まだ素案の段階なので、次年度にこれを推敲、加筆していかねばならないが、完成すれば理論の普及に大きく貢献するものと考えている。 前年度に遂行していた、保型L関数の値分布についてのM関数の理論の研究からの一種の副産物として、Dirichlet L関数を含む一般的なL関数の特殊値、およびその対数値に関する漸近公式を得た。これは Elliott や、Granville, Soundararajan らの先行研究とは異なるアプローチであり、得られた結果も相補的である。 普遍性定理の方向では、一般的な枠組みでの混合型同時離散普遍性の研究がさらに進展し、より一般化された定理を得るとともに、パラメーターの数論的性質によってはL関数自体を多少変形することによって望ましい結果が得られる、と言う方向の結果も示した。またトルコで開かれた国際会議の報告集に、離散普遍性についての総合報告を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に取り組んだのは、ほぼすべて、以前から研究計画として想定していた内容である。Schur 多重ゼータ関数とルート系のゼータ関数の関係についての研究は、当初の想定よりも困難が続出して一時はかなり行き詰まったが、徹底的なセミナーによってなんとか困難を打破し、論文にまとめ上げることができた。おそらくこれが今年度の最大の成果で、今年度だけを考えると予想以上の順調な進展と言えるかもしれないが、研究計画全体の中では、まあ想定通り、と言う印象を持っている。 またルート系のゼータ関数についての著作の執筆は、とうしょから相当の労力を咲かねばならないと考えていたもので、実際その通りの状況になり、進展具合もおおよそ、当初思っていたのに近い展開を見せている。したがってこの方向も、おおむね想定に沿った順調な進展状況といえる。 年度末になって、突然のコロナウイルスの大流行により、多くの研究集会や学会、セミナーなどが中止になるなどして研究の進展を阻害したが、今年度に関しては最後の一ヶ月程度のことだったので、重大な影響とまでは言えない。(来年度はかなり’不安だが。)
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、2020 年度はコロナウイルスの流行がどの程度制御されるか、という、個人的なレベルではコントロール不可能な事柄に多くを左右されるので、具体的な推進方策はなかなか策定しづらい。もちろん現時点でも、メールその他のツールを用いて、共同研究者との連絡は密に行なっているし、個人的な作業は進められるので各人が研究を進めているところではあるが、実際に会っての研究セミナーに比べると、やはり能率は落ちるようである。 それでも、ルート系のゼータ関数についての著作の執筆については、共同執筆者たちとメールその他での議論を進めながら、2020 年度中には完成させられるのではないかと考えている。これが一つの大きな目標である。 他に、Goldbach 生成関数に対するM関数の理論、多重ゼータ関数の負の整数点での挙動の研究、といった方向で、これから本格的に検討せねばならないアイデアはすでにいくつもあるので、そうしたアイデアを研究参加メンバーで共有して具体化していくことがまずは重要、と考えている。
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