Enriques曲面上の安定層のモジュライ空間についてUICのHoward Nuerと共同で双有理幾何を調べている。Enriques曲面はピカール数が10と大きいため、大変多くのフーリエ向井自己同値がある。とくに階数が奇数の場合はこの作用により、階数1のBridgeland安定な複体に移ることが分かっている。そこでモジュライの研究において、Bridgeland安定性の空間におけるwall/chamber構造の解析が重要である。以前の研究でcodimensionが1や0(つまりすべての対象の安定性が変化するwall)のwallの分類を行い、モジュライ空間の間の双有理対応を構成した。 さてK3曲面やアーベル曲面の場合の経験からもわかるようにcodimension 1のwallは多くの場合Fourier-Mukai変換と関係することが分かっている。一方Enriques曲面の場合、Enriques曲面上のFourier-Mukai変換と関係するかはっきりしないwallがあることが以前の研究で分かっていた。今年度はこのwallを詳しく調べ、very generalなEnriques曲面の場合(つまり被覆K3曲面のピカール数が10の場合)にはFourier-Mukai変換と関係すること、またvery generalでない場合も被覆K3曲面とモジュライ空間上に定義される自然な行列式直線束の間の関係を使ってモジュライ空間の間の同型が構成できることを示した。またこれまで得た成果をプレプリントにまとめarxivに公表した。
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