K3曲面上の安定層のモジュライ空間の研究:ピカール数が1のK3曲面上の安定層のモジュライ空間のweak Brill-Noether性を調べたCoskun Izzet (アメリカ)、Howard Nuer (イスラエル)との共同研究に関する論文がいくつかの修正をおこなったのち学術誌に受理された。 ピカール数1のK3曲面上で、安定層のモジュライ空間が定めるフーリエ向井変換を調べ、偏極の次数が十分大きいときに、安定層のモジュライ空間の一般元について安定性が保たれるための簡明な十分条件を与えた。これは対角線集合のイデアル層によるフーリエ向井変換の場合の結果(10年以上前に古典的手法で得られた)を一般化するものである。この応用として上記 Weak Brill-Noether性の研究と合わせ、次数2の一般のK3曲面上で算術的Cohen-Macauley安定束の向井ベクトルを調べた。
楕円曲面上の安定層のモジュライ空間の双有理同値類についての研究結果をまとめた論文は前年度に投稿していたが、いくつかの修正ののち学術誌に受理された。
モジュライ空間を調べるのに往々にしてピカール数1という技術的仮定を置く。これにより曲面のピカール群から生じる複雑さを避けることが可能となり、モジュライ空間の性質は調べやすくなる。一方楕円ファイバー構造をもつ曲面などのように、興味深い曲面を除くこととなり、ピカール数に関する制限を外すことは重要である。この目的のため、手始めにピカール数が一般の場合にアーベル曲面上の安定層のモジュライを調べ始めた。
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