研究実績の概要 |
力学系において,アフィン平面の自己同形写像にへノン写像とよばれる重要なクラスがある.国立台湾師範大学の Liang-Chung Hsia 氏との共同研究で,へノン写像の族を考え,族の代数・数論力学系的な性質を unlikely intersection の観点から調べた.この研究で鍵となるのは,底空間上の直線束に良い adelic 計量を構成することである.特に,有限素点上では底空間に付随するベルコビッチ解析空間を考える.得られた結果をプレプリントとして arXiv に公開した(Liang-Chung Hsia and Shu Kawaguchi, "Heights and periodic points for one-parameter families of Henon maps," preprint 2018, arXiv:1810.03841, 40 pages).また,この研究について,2018年9月にデンマークのコペンハーゲン大学で開催された Intercity Seminar on Arakelov Geometry 2018 で講演する機会を頂いた.またトロピカル幾何については,研究分担者である京都大学の山木壱彦氏と,主にトーリック・トロピカル多様体上での直線束の正値性(base-point free, ample, bigなど)についての研究を進めた.トロピカル多様体は整構造が入ることが特徴であり,直線束の正値性の概念も整構造を反映したものとなる.この研究について,山木壱彦氏が,2019年2月に鹿児島大学で開催された代数・解析・幾何学セミナーで講演した.さらに,京都大学の吉川謙一氏と向井茂氏とボーチャーズの Phi 関数の代数的表示を用いて,楕円 j 関数の差と Phi 関数との関係について共同研究をするという機会に恵まれた.
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