研究課題/領域番号 |
18H01115
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉永 正彦 北海道大学, 理学研究院, 教授 (90467647)
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研究分担者 |
長谷部 高広 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (00633166)
島田 伊知朗 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (10235616)
徳永 浩雄 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (30211395)
阿部 拓郎 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (50435971)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超平面配置 |
研究実績の概要 |
超平面配置の補集合の二重被覆やミルナーファイバーのホモロジーのねじれに関する単著論文一本と、G-Tutte多項式に関する共著論文二本が国際誌に掲載された。 いくつかの研究が一段落し、下記(1)~(5)の研究成果を論文として投稿した。(1)学生の赤坂氏と石橋氏と共同で行った、Chip-firingゲームから決まる語の集合の特徴づけを得た。(2)陶山氏との共同研究により、A型ルート系に付随したCatalan配置やShi配置の対数的ベクトル場の基底を離散積分を使って構成することができた。このようなベクトル場の存在は20年以上前から知られていたが、明示的に構成できた意義は大きい。特にその構成が、Calogero-Moser系のquasiinvariantと呼ばれる多項式の積分表示の「離散化」で得られているという点も今後の研究の方向性をいくつか示唆している。(3)九州大学の塚本氏、蔦谷氏から位相力学系の自由性とMarker性の関係に関する問題と部分空間配置の位相構造との関係に関する指摘をうけ、共同研究を開始した。自由だがMarker性を持たない位相力学系の存在に関する成果を得た。(4)学生の菅原氏との共同研究で、直線配置の補集合のハンドル分解に関する成果を上げた。補集合の位相型を記述する方法はこれまでもあったが、ハンドル分解まではこれまで得られていなかった。またこのために「カスプ付きディバイド」という概念を導入し、今後低次元トポロジー的な研究を進めたいと考えている。(5)学生の東田氏と、どのような超平面配置が一元体F_1上定義されるか?というBejleri-Marcolliの問いに答える研究成果を上げた。 その他、quasiinvariantと多重配置に関する研究(阿部-榎本-Feigin氏との共同研究), K(pi,1)性や青本複体のq-類似に関する研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は多くの研究集会が中止/オンライン化され、想定通りにいかなかった部分もあるが、当初は予期していなかった進展もいくつかあった。 学生の小山氏と進めている2-配置と呼ばれる部分空間配置の極少性の証明の完成に至らなかった。証明の方針は立っているのだが、細部を詰め切れないでいる。コクセター配置に対するquasiinvariantと多重配置の関係に関して、阿部-榎本-Feigin氏らと研究を進めており、論文準備が進んでいるがまだ完成していない。 一方、上記「実績の概要」で述べた研究(3), (4), (5)は数学の様々な分野との新しい接点を明らかにする意義深い進展だと考えている。(3)は位相力学系との新たな接点であり、(4)はこれまで主にホモトピー型が注目の対象であった超平面配置の補集合の(微分)位相型の表示に関する成果である。(5)はファインマン積分の分析に現れる代数多様体に関連する超平面配置と混合テイトモチーフの理論の関係を動機としており、先行研究で提起された問題に解答を与えるものである。ルート系のLinial配置の特性多項式の零点分布に関するPotnikov-Stanleyの予想に数年前から取り組んでいるが、学生の田村繁太郎氏が完全に解決する成果を挙げた。この成果は田村氏の単著論文として投稿中である。 論文としてまとめるには至っていないが、留学生の de Vries氏との研究により、有理多面体の対称性とEhrhart準多項式の constituent との関係に関する研究が進展中であり、また、学生の工藤氏とマトロイドの実現空間の研究を開始した。 研究集会の開催/参加や外部との研究打ち合わせは減ったが、オンラインで継続しており、本計画に関連して4件の研究発表講演を行った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、学生や共同研究者との研究を並行して進める予定である。 (a)小山氏と進めている2-配置の極少性の研究の完成を目指す。2-配置は複素超平面配置の一般化であり、複素超平面配置の補集合の極少性の一つの証明は、一次式の冪積の臨界点に関する「Varchenko予想」(Orlik, Terao, Silvotti氏らにより解決済み)を経由するものである。Varchenko予想の部分空間配置版を確立する、という方針で研究を進めたい。(b)工藤氏とマトロイドの実現空間い関する研究を進める。Nazir-Yoshinagaの先行研究により、階数3のマトロイドの実現空間に関する基礎理論があり、これを高階化する。(c) de Vries氏と進めているEhrhart準多項式に関する研究は、最終目標がはっきりとしているのだが、時間がかかりそうであれば、区切りの良いところで論文として発表することを検討する。(d)Wang氏と自由性に関する研究を開始しており、陶山氏との離散積分の理論の発展を目指したい。(e)菅原氏との共同研究では「カスプ付きディバイド」のKirby計算の開発や、平面曲線補集合への一般化を考えたい。(f)阿部-榎本-Feigin氏等と進めているquasiinvariantに関する研究は、論文を完成させて投稿したい。(g) 超平面配置の K(pi, 1)性に関して個人的な研究を進めたいと考えている。 (a)-(e)は定期的な議論を通して研究を進める。(f)は論文原稿の推敲段階にあるので、主にe-mailで、必要に応じてZoom等で議論する。(g)については個人的に進める予定であるが、三角圏の安定性条件の空間の研究でも興味を持たれており、その方面の研究者との打ち合わせも行う。その他、様々な方向への発展の可能性を探るために研究集会、セミナー等の企画および参加、書籍等を通じた情報収集を行う。
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