研究実績の概要 |
今年度は,日本学術振興会外国人特別研究員のAnderson Arley Vera Arboleda氏との共同研究の成果を,プレプリント“Double Johnson filtrations for mapping class groups”(arXiv:2009.07484) としてまとめた(雑誌投稿中).以下ではこの論文の成果について述べる. この論文ではまず,群の拡張N列の概念を大幅に一般化して,「良い」順序可換モノイドΛで添え字づけられたフィルトレーションに拡張し,Johnson準同型の理論を一般化した.次に,特にΛが2個の自然数の組の全体N^2の場合を考察した.N^2で添え字づけられた群のフィルトレーションは2重フィルトレーションと呼ぶことができる. この2重フィルトレーションの一般論を曲面の写像類群に適用した.まず,Kが種数gの境界付き曲面Σの基本群であり,この曲面の写像類群Mを考える.3次元球面の種数gの標準的なHeegaard分解に付随して,基本群Kの2つの正規部分群X,Yを取ることができる.Kには,これらの正規部分群をそれぞれ(1,0),(0,1)の位置に持つような自然な2重フィルトレーションK_**が入る.写像類群Mの元は2重フィルトレーションK_**を保つとは限らないが,いわゆるGoeritz部分群(ハンドル分解の写像類群)GがK_**を保つ部分となる.2重フィルトレーションの一般論より,Goeritz群Gに2重フィルトレーションG_**が誘導されて,Johnson 準同型も定義される.Goeritz群の2重フィルトレーションは,写像類群Mの2重フィルトレーションM_**に拡張することができるが,この場合の添え字は-1以上の整数の組(i,j)によるものである.これを写像類群Mの2重Johnsonフィルトレーションと呼ぶ.
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