研究実績の概要 |
研究代表者のこれまでの研究により, シンプレクティック型の一般化されたケーラー多様体のスカラー曲率がモーメント写像として与えられることが示された. これは通常のケーラー幾何における藤木・ドナルドソンの「モーメントマップの枠組み」を一般化されたケーラー幾何学に拡張したものである. さて, スカラー曲率の概念が導入されれば, スカラー曲率が一定の一般化されたケーラー構造の存在, 非存在を調べることは重要な問題となってくる. この研究では, 一般化された複素多様体の自己同型群という概念を新たに導入した. 多様体の奇数次のベッチ数が零という条件の元, もし 一般化された複素多様体がスカラー曲率一定のシンプレクティック型の一般化されたケーラー構造を持てば, その自己同型群のリー環は簡約リー群となることを示した. これはケーラー幾何での松島・リヒネロビッツの定理の拡張となっている. 2次元射影空間と3次曲線のペアは一般化された複素多様体となっており, 3次曲線は9種類に分類される. この2次元射影空間と3次曲線のペアの自己同型群を計算し, 自己同型群が簡約とならないのは, 3重直線(the triple line), 2重直線と直線(the double line and a line), 一点で交わる3本の直線(three lines intersect at one point) の3種類に限ることを示した. さらに存在に関しては, 変形理論を用いて, スカラー曲率一定のシンプレクティック型の一般化されたケーラー多様体を構成することに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究はシンプレクティック型の一般化されたケーラー多様体を調べていたが, コンパクト半単純リー群などシンプレクティック型ではない一般化されたケーラー多様体も知られている. 今後は, シンプレクティック型とは限らない一般化されたケーラー多様体にたいして, モーメント写像の枠組みを構成し, モーメント写像としてのスカラー曲率のを調べる. さらに, Donaldson-Tian-Yau 予想を一般化されたケーラーに拡張する研究も推進する.
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