研究実績の概要 |
昨年度までの研究で、正定値シュレディンガー形式に対する臨界性・劣臨界性の特徴付けを行い、それを臨界的ハーディ型不等式の証明に応用した。まず、拡張ディリクレ空間の概念の一般化である拡張シュレディンガー空間の性質を学習し、正定値シュレディンガー形式に対する臨界性・劣臨界性の定義が、拡張ディリクレ空間の言葉で特徴づけられることを示した。これは、ディリクレ形式の再帰性・過渡性が拡張ディリクレ空間の言葉で特徴づけられることに対応している。また、 ディリクレ形式の再帰性とシュレディンガー形式の臨界性はドゥーブのh-変換をとおして互いに結びつく。さらに, シュレディンガー形式の臨界性は臨界的なハーディ型不等式を導く。 この二つの事実を結びつけることで、再帰的なディリクレ形式のh-変換によって臨界的なハーディ型不等式を導くことが可能になる。さらに、臨界的ハーディ・ウエイトが無限遠点近傍で臨界的なハーディ・ウエイトであるための十分条件を与え、それが零臨界的なウエイトになることを示し、最適なハーディ型不等式を導く方法を与えた。従来良く知られているハーディ型不等式がこの方法を用いて導けることを確認した。 今年度は昨年までに得られた方法をより具体的な例に応用し、従来の結果が統一的に得られることを確認した。特に、よく知られている回転対称な場合においては、一次元拡散過程におけるフェラーによる再帰性・過渡性の判定条件を用いることで、シュレディンガー形式の臨界性を示すことができ、ハーディ型不等式の臨界性が示せる。フェラー理論をハーディ型不等式と結び付ける研究はなく、ハーディ型不等式に対して確率論の立場から新しい視点を与えるものである。
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