研究課題/領域番号 |
18H01122
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
植田 好道 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (00314724)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 単位的正写像 / 境界定理 / Poisson 境界 / 非可換 |
研究実績の概要 |
長谷川慧氏の協力を得て,以前に見出したアイディアを基に単位的完全正写像についての基礎的研究を行った.本研究課題の非可換解析学という言葉は様々な解釈を持ちうるが,一つの解釈として作用素環論を基礎とした Arveson により提唱された一連の研究とそれに引き続く研究がある.その Arveson の最初期の研究で「境界定理」と呼ばれるものが証明され,応用として,自己共役とは限らない一般の行列あるいは有界線型作用素に対するユニタリ同値性の特徴付け定理が得られていた.他方で,2010年ごろに発表された Arveson の論文に境界定理の既知の証明が自然なものではないと暗に示唆する注意が書かれていた.さらに同じ頃に公表された有限次元に限定して Arveson のユニタリ同値性定理を解説した論文,および泉氏が量子群に関係する作用素環の問題を解決するために導入した非可換 Poisson 境界の概念から動機を得て,境界定理の極めて簡明かつおそらく最も自然と思われる証明を得た.この証明は元の境界定理の枠を超えた主張を導くことも判明し,実際,単位的完全正写像が準同型写像に極めて近い概念であることを示唆する主張を得た.さらに境界定理と古典的な Toepltz 作用素の解析との関係も明確にすることができた.これらの結果はローマ大学でのセミナー講演すると共に雑誌に投稿し素早く査読が済んで,出版された.
私が研究代表者として遂行中の挑戦的萌芽研究により確立していた Matrix liberation process に対する上からの大偏差評価の証明がユニタリ Brown 運動の独立族自体に適用可能なことも確認した.これは 2次元 Yang-Mills 測度の研究を念頭に考えてみたもので,ユニタリ Brown 運動に対する本研究課題が企てる問題の一つに関わるものである.挑戦的萌芽研究の研究成果と合わせて論文として公表する方向である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単位的正写像の研究を通してこれまでに手をつけていなかった非可換解析学に関する話題に入る端緒を見い出した.また,本研究課題の目標に関係する内外の発展があり,それに動機付けられて研究計画がより明確になってきた.
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今後の研究の推進方策 |
特別な方策は不要と思うが,さらに多くの研究者と意見交換等を進めていく.
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