研究課題/領域番号 |
18H01133
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
繆 いん 筑波大学, システム情報系, 教授 (10302382)
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研究分担者 |
三嶋 美和子 岐阜大学, 工学部, 教授 (00283284)
盧 暁南 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 助教 (10805683)
古賀 弘樹 筑波大学, システム情報系, 教授 (20272388)
LU SHAN 岐阜大学, 工学部, 助教 (30755385)
神保 雅一 中部大学, 現代教育学部, 教授 (50103049)
澤 正憲 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (50508182)
鎌部 浩 岐阜大学, 工学部, 教授 (80169614)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | incidence matrix / sparse / group testing / fingerprinting / multi-access |
研究実績の概要 |
本研究は、スパースな結合行列を持つ組合せ的構造を分析・構成し、グループ検査やデジタル指紋、多元接続通信などへ応用することを目的としている。 スパースな結合行列を持つグラフ上のグループ検査は、通信ネットワークへの応用があり、通常のグループ検査とは異なり、グループで検査できるアイテムは連結でなければならない。この制限により、構成問題がかなり難しくなる。今年度は完全グラフや格子グラフ上のグループ検査について、完全グラフや格子グラフの特別な性質を駆使し、陽性アイテムが高々1つであるときの最適な検査スキームを開発した。 Cover-free family (CFF) は特別なスパース性質をもつ結合行列の一種であり、Erdos et al. (1982, 1985) によく研究されていた。放送型暗号における耐結託追跡スキームを研究するため、CFF を一般化し、その一般化された CFF 問題に対して、組合せ論的モデルを構築する上で、own-subset という構造の拡張である rare-subset を数えることにより、その族の上界を導き、さらに確率手法により、その族の下界も導いた。 大規模分散ストレージシステムの情報消失を効率よく修復するため、局所修復可能符号が導入され、近年脚光を浴びている。局所修復可能符号の修復可能組の族と一般化された CFF の関係を明らかにし、一般化された CFF を用いて、アルファベットサイズの超線形長さを持つ漸近的最適な局所修復可能符号の構成法を開発した。 数種類の組合せデザインや記憶媒体用の符号についても性質を分析し、代数的及び組合せ論的手法により構成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究計画は、(1) 分離可能行列の最大列数 M(t,n) に関する上界と下界の確定、及びそれに基づいた効率性の高い識別アルゴリズムの開発、(2) 強分離可能行列が検査できるアイテムの数を決めること、(3) 追跡スキームの構成法、(4) 署名符号の上界や下界を決め、構成することとした。 現段階では、研究計画 (2)、(3)、(4) はおおむね順調に進展している。研究計画 (1) については、いくつかの結果が得られたが、レベルの高い学術雑誌に投稿するまではまだ至っていない。研究計画 (1) がやや遅れている主な理由としては、グラフ上の検査計画や cover-free family、特に局所修復可能符号について新しい展開ができ、多くの時間を費やしたためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は前年度に引き続き、スパースな結合行列を持つ組合せ的構造を分析・構成し、グループ検査やデジタル指紋、多元接続通信などへの応用を開発する。 まず、cover-free family (CFF) の性質をさらに調べ、一般化された CFF の構成により、局所修復可能符号をさらに構成する。関連する古典的な誤り訂正符号である BCH 符号についても、最小距離が符号の長さに比例するものを代数的手法により構成してみる。 分離可能行列は検査計画における典型的な結合行列である。分離可能行列は大量のアイテムを検査できるがそれに基ついた識別アルゴリズムの効率は良くない。確率的手法と極値集合論の手法を融合し、強分離可能行列を導入する上で、強分離可能行列が検査できるアイテムオの数をさらに詳しく調へる。 多元接続通信に使われている署名符号を結合行列と見なし、組合せ論的立場から研究する。デジタル指紋や、検査計画、グラフ理論、B_t 系 列、極値集合論などとの関係を調べ、署名符号の下界と上界を決め、署名符号に関する組合論的構成法を開発する。特に、アルファベットのサイズが比較的に小さいときの署名符号の性質を調べる。 有意ベクトル E の少なくとも一つの成分を識別できるスキームは親識別可能スキームといい、デジタル指紋や検査計画で独立に研究されてきた。デジタル指紋や検査計画に潜んでいる親識別可能スキームの共通性を見出し、親識別可能スキームを体系化し、確率手法や極値グラフ理論により、一般化された親識別可能スキームの下界と上界を導く。
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