研究課題/領域番号 |
18H01134
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
大杉 英史 関西学院大学, 理学部, 教授 (80350289)
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研究分担者 |
東谷 章弘 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (60723385)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グレブナー基底 / 凸多面体 / エルハート多項式 |
研究実績の概要 |
凸多面体に含まれる格子点の数え上げや三角形分割は離散幾何学に止まらず様々な分野に現れる基本的かつ重要な研究対象である。当該研究の目的は,近年発明された離散幾何における革新的な新手法とグレブナー基底理論の融合・相互作用により,グレブナー基底理論に基づく新手法の開発を進めることである。 今年度の主たる研究成果としては,以下の3つがあげられる。 1.有限グラフに付随するPQ型隣接凸多面体と呼ばれる格子多面体について研究し,ジョイングラフを考えた場合の,PQ型隣接凸多面体のh*多項式に関する公式を与えた。この公式を応用し,車輪グラフのPQ型隣接凸多面体の正規化体積の明示的な公式を与えることにも成功し,Chen-Davisの予想を肯定的に解決した。また,完全多部グラフについてもh*多項式や正規化体積の公式を与え,Chen-Davisの完全2部グラフ K_{2,m} に関する結果を大幅に拡張することができた。 2.自然数の分割に付随するシュペヒトイデアルと呼ばれるイデアルについて研究し,シュペヒトイデアルに関する Haiman-Wooの結果(シュペヒトイデアルの被約性,および,普遍グレブナー基底の構成)の簡潔な別証明を与えた。 3.シュペヒトイデアルのステイト多面体が一般化されたpermutohedron であることを証明した。この結果によって特に,与えられたシュペヒトイデアルが持つイニシャルイデアルの個数を,分割の大きさ n と,連続する成分の差の最小値 k を用いた式 n!/(k+1)!で表すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イデアルのグレブナー基底を完全に把握する「ステイト多面体」を求めることは通常非常に困難であり,シュペヒトイデアルに関する結果は貴重である。活用したアイデアを他の重要なクラスにも拡張できる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
正規多面体,反射的凸多面体などの重要な性質を持つ整凸多面体について,既存の著名なクラスの解析や,新しい豊富なクラスの発見に努める。これらの研究成果をもとに,理論的な考察に加えて,計算機支援によって豊富なクラスによる実証を遂行し,離散幾何における最新の理論をグレブナー基底を始めとする可換代数的手法と融合し,関連する理論の発展を目指す。
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