研究課題/領域番号 |
18H01136
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂上 貴之 京都大学, 理学研究科, 教授 (10303603)
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研究分担者 |
横山 知郎 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (30613179)
米田 剛 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (30619086)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 応用数学 / 流体力学 / 力学系 / 流体方程式 / 微分幾何学 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に基づいてサブプロジェクト(P1)-(P3)について以下の研究を行った.(P1)では(P3)に関連して超流動流体の作る量子渦パターンを理解するためのトーラス上のLiouville方程式の解の構成をウィーン大学のV. Krishnamurthy博士と行った.現在投稿準備中である.次に昨年度得た有限長の長さを持つ線分渦層の一意性と安定性の解析をS. Llewellyn-Smith教授およびB.Protas教授と共同研究で行った.現在本成果は査読中である.(P2)では昨年度開発した反応拡散系のスポットダイナミクスを記述する方程式を使って定常スポット解の存在やその安定性に成果を得た.本成果はSIAM J. Appl. Dyn. Sysに掲載が決定している.C. Green博士と榊原博士との共同研究である多様体上のHarmonic measureの解析解と数値解の構成にも成功して,本成果は論文としてまとめている.横山は一般的な2次元ハミルトン流のトポロジカルな遷移距離の下限を調べる手法を構成した.これらの手法はデータ解析をする際に活用できるものであり,幅広い活用の可能性がある.米田は,体積保存する微分同相写像群の中心拡大から導かれるコリオリ力付き非圧縮オイラー流に対する断面曲率・Misiolek曲率を考え,コリオリ項の幾何学的構造が、帯状流(無限次元多様体上の測地線、コリオリ力付きEuler方程式の定常解)における断面曲率・Misiolek曲率を正値へ誘導する作用を有することを示した.論文として採録決定済みである.今年度はコロナウィルス感染症があったが,日本数学会や米国物理学会などでの研究成果の発表や国際研究集会でもオンライン発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染症の蔓延下で対面での研究打ち合わせが大きく制限される中でも昨年度末に繰り越した研究費を使ってオンライン研究環境を構築した.その結果,定期的に国内外の共同研究者との議論ができるようになったことが功を奏し,研究計画通りに研究が進捗し順調に成果が出ている.また,王氏をRAとして雇用することで数値計算を多数実施する体制の構築にも成功した.トーラス上のスポットダイナミクスの数学的理解が予想以上に進んだことは意義がある.推進した国際共同研究は,その成果が論文として多くまとまると同時に,論文投稿後も,これらの成果を踏まえた新しい問題について共同研究が継続している.横山は理論面で進展があり様々な拡張方向があることがわかってきた.実際,従来の2次元ハミルトン流の文字化を任意のコンパクト曲面上の文字化に拡張できることがわかってきた.米田は令和元年度では回転楕円面上の帯状流に対する断面曲率やMisiolek曲率の洞察を進め、令和二年度ではその発展版としての「自転を加えた場合」の洞察を進めた.これは当初に計画していた通りの進捗を意味するものである.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて,坂上は各プロジェクトの研究として平面の有限渦層解の構成,トーラスや二重周期平面上の量子渦の解析解の構成,トーラス上の反応拡散系スポットダイナミクスのさらなる研究などの個別研究を発展させる.それとともに,これらのサブプロジェクトの成果を活かしてサブプロジェクトをまたぐような研究成果の創出を目指す.特に量子渦パターン形成と多様体の構造の問題,多様体上での渦分布を考える上でのヒントとなる調和測度の構成や点渦統計を実現するギブス測度の構成などに挑戦する予定である.(P2)で開発した非線形シュレーディンガー方程式の数値コードはスポット解を得るまでには至っていないが,数値計算を継続していく.横山は上記で述べた,任意のコンパクト曲面上の2次元ハミルトン流の文字化を行う.さらに,非有界な場合に既存の理論を拡張していく.米田は体積保存する微分同相写像群の中心拡大における共役点の存在性に関する洞察を進める。コリオリ力(自転)に限らず、歳差運動に対する安定性・不安定性の洞察も進める予定である.本研究では複素解析に基づく流体運動の理論的・数値的に果たす役割が明確になってきたので,関連する研究者による研究集会なども計画して,本成果をまとめると同時にその先にある研究展開を俯瞰していく.
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