研究実績の概要 |
本年度は2成分ボース・アインシュタイン凝縮体の渦格子の集団モード、量子揺らぎ、および、成分間の量子もつれの効果についての系統的な研究を行い、それを論文としてまとめた (T. Yoshino, S. Furukawa, and M. Ueda, J. Phys. B: At. Mol. Opt. Phys. 55 (2022) 105302)。一般に荷電粒子の場合は外部磁場によって電荷のラーモアの回転の向きは磁場の向きによって決まってしまう。しかし、冷却原子気体の場合は、レーザーによる人工ゲージ場を原子種ごとに別々に印可することが可能なため、2成分を同じ方向に回転させることも(平行磁場)、反対向きに回転させることも(反平行磁場)可能です。この自由度を活用することによって2成分ボース・アインシュタイン凝縮体に発生する渦格子の多様な物理現象を探求することを目的として研究を遂行した。その結果、次の結果を得た。 (1)まず、平均場理論の範囲で平行磁場と反平行磁場に対する渦格子の集団モードを記述できる有効理論を構築した。有効理論の場合は、粗視化された密度を用いることになるが、それに対応して結合定数をリノマライズする必要性を指摘した。その結果、平行磁場と反平行磁場に対する低エネルギー励起スペクトルが適当な理スケーリングをすることで互いに結びつくことを見出した。 (2)次に、平均場理論を超えた効果を見るためにエンタングルメントエントロピーを計算し、成分間の相互作用が斥力(引力)の場合は2成分間のエンタングルメントが平行(反平行)磁場の場合により強くなることを見出した。また、エンタングルメントスペクトルに異常な平方根型の分散関係が現れることを見出した。
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