研究課題/領域番号 |
18H01146
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小森 文夫 東京大学, 物性研究所, 教授 (60170388)
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研究分担者 |
宮町 俊生 東京大学, 物性研究所, 助教 (10437361)
矢治 光一郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (50447447)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 表面状態 / トポロジカル近藤絶縁体 / スピン偏極 |
研究実績の概要 |
強いスピン軌道相互作用がある物質表面において、軌道運動量に依存した特異なスピン構造をもつ金属電子状態が注目を集めている。この研究の発展として、強い電子相関のある系においても、その表面にスピンと運動量が結合した特異なスピン構造をもつ金属表面バンドが存在することが議論されてきた。本研究では、トポロジカル近藤絶縁体やなどの電子相関が関与するトポロジカル物質単結晶表面を、表面科学手法を用いて原子レベルで清浄化・平坦化し、準粒子干渉測定とスピン角度分解光電子分光とを主な研究手法として、そのスピン偏極表面電子構造を解明することを目的として研究を開始した。 走査トンネル顕微鏡(STM)を用いる研究を行うA班は、本研究においてトポロジカル近藤絶縁体候補のSmB6とTbB12単結晶表面清浄化法の開発を行った。既に発表したSmB6研究では、傾斜表面をスパッタアニールによって表面を清浄化した。本研究で用いる平坦面単結晶表面では、表面ステップ近傍での原子移動が広いテラスでは有効に働かず、同じ条件では清浄化ができない。そこで、さらに低温での長時間アニール条件を探索し、清浄な1x1表面を作製する方法を確立し、STM観察によって平坦面の原子像を確認した。また、既設極低温STMに超伝導磁石を取り付ける計画を令和元年度に繰り越して実施した。 光電子分光を用いる研究を行うB班は、スズ単原子層がグラフェンとSiC基板の間にインターカレーションした系でのスピン角度分解光電子分光(SARPES)により、強いスピン軌道相互作用に起因するスピン偏極バンド構造を測定した。そのスピン偏極バンド分裂の方向の違いは結晶構造の対称性ではなく、バンドを形成する波動関数の対称性に依存することをみいだした。また、SmB6とTbB12の表面バンドをSARPESで測定するための光エネルギーの条件を探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既設STMおよびSARPESを用いた研究は順調に進んでいる。トポロジカル近藤絶縁体の表面清浄化規則化の方法を確立できたので、その後の研究を推進する基礎を確立することができた。また、強いスピン軌道相互作用によるスズ単原子層の電子状態の研究では、興味深い結果を発表した。一方、極低温STMへの超伝導磁石設置は、磁石の仕様変更と納品の遅れによって予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度途中でA班研究分担者の宮町が、年度末にはB班研究分担者の矢治が研究場所を異動した。これにより、共同研究者の研究環境が令和元年度と令和2年度から変化した。今後は、各々の研究機関において、引き続き研究分担者として、研究代表者が所属する物性研究所の共同利用を実施して研究を推進する。これにより、目的とする強い電子相関のある系のスピン偏極表面電子構造を解明する研究を完成する。
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