研究課題
強いスピン軌道相互作用がある物質表面において、軌道運動量に依存した特異なスピン構造をもつ金属電子状態が注目を集め、その研究の発展として、強い電子相関のある系においても、スピンと運動量が結合した電子状態の研究が行われつつある。本研究では、電子相関が関与する物質単結晶表面を、表面科学手法を用いて原子レベルで清浄化・平坦化し、準粒子干渉測定とスピン角度分解光電子分光とを主な研究手法として、そのスピン偏極電子構造を解明することを目的とする。走査トンネル顕微鏡(STM)を用いる研究を行うA班は、本研究においてトポロジカル近藤絶縁体候補のSmB6とTbB12単結晶表面清浄化法の改良を行った。低温での長時間アニール条件を探索し、STM観察によって点欠陥が極めて少ない平坦面準備法を確立した。また、吸着したCo単原子のCu(001)表面におけるKondo効果の基板格子ひずみの影響を系統的に調べ解明した。装置開発としては、本年度に計画を繰り越した既設極低温STMに超伝導磁石を取り付けを実施した。2020年1月より、超伝導磁石を用いた装置の調整を行う予定であったが、COVID-19の影響で海外メーカーの支援が受けられなくなり、研究者だけで整備を始めた。光電子分光を用いるB班は、共同研究者とともにBi吸着GaSb(110)-(2×1)表面のスピン偏極電子状態を調べ、強いスピン軌道相互作用に起因した電子状態をみいだした。また、海外の共同研究者とともに強誘電体GeTeの表面及バルクの軌道依存したスピン偏極電子状態を調べ、100%スピン偏極電子状態を実証した。新しい系として、層間の電子相互作用が重要となるツイスト2層グラフェンの研究を始め、共同研究者とともにSTMおよび角度分解光電子分光による測定を開始した。
3: やや遅れている
年度途中でA班研究分担者の宮町が、年度末にはB班研究分担者の矢治が研究場所を異動した。既設装置を用いた実験研究は予定どおりに行ったが、分担者の異動と海外メーカーの支援がCOVID-19の影響で途絶えたために、新規STM装置の建設がやや遅れている。
COVID-19の影響があり海外メーカーの支援が受けられないので、新規STM装置の建設は研究者で進め、研究を完成する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件) 学会発表 (31件) (うち国際学会 14件、 招待講演 5件)
Physical Review Research
巻: 2 ページ: 013107, 1-7
10.1103/PhysRevResearch.2.013107
Applied Physics Letters
巻: 116 ページ: 051604, 1-4
10.1063/1.5142064
Journal of Physics: Condensed Matter
巻: 31 ページ: 255001、1-6
10.1088/1361-648X/ab0fbc
AIP Advances
巻: 9 ページ: 045307, 1-5
10.1063/1.5079982
ACS Nano
巻: 13 ページ: 11981~11987
10.1021/acsnano.9b06091
Physical Review Materials
巻: 3 ページ: 126001,1-7
10.1103/PhysRevMaterials.3.126001