研究課題/領域番号 |
18H01147
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小西 邦昭 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60543072)
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研究分担者 |
赤井 大輔 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 助教 (50378246)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / メンブレン / メタマテリアル / 真空紫外光 / 非線形光学 |
研究実績の概要 |
レーザー角度分解光電子分光法(ARPES)は、物質の電子状態を直接的に探索するための強力な手法である。このための光源として、本研究では、「ワイドバンドギャップ・メンブレン・大面積」という新しいコンセプトに基づく人工ナノ構造を開発し、可視光の基本波を、レーザーARPESに応用可能な強度で波長190nm以下の真空紫外光へ円偏光波長変換する手法を開拓する。 今年度は、フォトニック結晶ナノメンブレン構造からの真空紫外円偏光第三次高調波発生特性の詳細を実験的に調べた。フォトニック結晶構造に共鳴する波長の円偏光を入射したときにのみ、真空紫外円偏光波長変換が生じることを、実験的に明らかにした。また、発生する真空紫外円偏光の最大フォトン数が、一秒あたり約10の8乗個に達することを明らかにした。これは、レーザーARPESなどの分光応用の可能性につながる真空紫外光強度である。 今年度は、フォトニック結晶ナノメンブレン構造からの真空紫外円偏光第三次高調波発生の数値計算シミュレーションを進めた。市販の数値計算ソフトウェアで、入射光によってフォトニック結晶ナノメンブレンの内部に誘起される電場分布を計算し、それによって生じる3次の非線形分極が遠方場に生成する光電場を計算した。その結果、入射円偏光と逆回りの円偏光第三次高調波発生が計算でき、実験結果と整合する結果を得ることができた。さらにこのシミュレーションを活用することにより、構造のわずかな異方性が、第三次高調波の円偏光度に大きく影響することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始当初の目標であった、フォトニック結晶ナノメンブレンからの真空紫外円偏光第三次高調波発生の観測に成功し、さらにその強度が、分光応用につながる可能性のある十分な強度であることを、2年目の段階ですでに確認することができた。さらにそれに加えて今年度は、フォトニック結晶ナノメンブレンからの真空紫外円偏光第三次高調波発生を、数値計算をもちいてシミュレーションすることにも成功した。これは、想定以上の成果であり、当初の計画以上に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、数値計算シミュレーションも活用することにより、真空紫外円偏光波長変換の効率をより増大させるための最適構造を探索し、実験的に明らかにしていく。並行して、現在実験に用いているγ-Al2O3以外の材料をフォトニック結晶ナノメンブレン作製に用いることも検討していく。 また、より短波長の領域での波長変換を行う可能性について、検討を進める。
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