研究課題
これまで開発してきた時間分解光電子分光装置(TARPES)を用いた精密測定を通じて、固体物質やその表層域に生じる極端な非平衡現象を電子論的に解明することが、本研究課題の主題であった。最終年度は、仕事関数のTARPES測定から、固体表層数Åにある表面分極の非線形感受率を求める新たなモデルを構築した(submitted)。具体的には、表面分極を平行平板コンデンサーと見立て、コンデンサーにかかる電位を仕事関数、コンデンサーの電荷と平板間の距離の積を分極とみなすことで、仕事関数という電子論的な物理量と非線形感受率という光学的な物理量を関連づけた。この他、2016年に我々のグループで発見し、その後研究を展開してきたトポロジカル絶縁体表面に生じる光起電力に関して、知る限り最も大きい応答が誌上発表されることになった(PRB accepted; オーストリアのグループとの共同研究)。タリウムを含むトポロジカル絶縁体にフェムト秒パルスを照射すると、65mVの表面光起電力が生じるのに加えて、表面ディラック電子状態に過渡的に電子が溜まり続け、フェルミ準位が平時に比して28meVも上昇することをTARPES用いて示した。また、表面光起電力効果と2次元表面電子ガスが織り成すダイナミクスをTARPESとTHz時間領域分光の組み合わせから解明する研究も誌上発表にこぎつけた(PRB 2022)。時間分解光電子分光法に適した1 MHz程度の繰返し周波数を有するフェムト秒パルスレーザー光源の開発を進めた。これまで1 MHz光源を手のひらサイズにまで小型化することに成功していたが、最終年度は、これが通常のオフィス環境、即ち無塵、恒温、除振等の特別の対策をすることのない環境において、1か月以上安定に動作させることに成功した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 備考 (1件)
Physical Review B (accepted)
巻: xxx ページ: xxx
Physical Review B
巻: 106 ページ: 195430
10.1103/PhysRevB.106.195430
https://engineeringcommunity.nature.com/posts/measuring-the-work-function-precisely