研究課題/領域番号 |
18H01150
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
冨田 誠 静岡大学, 理学部, 教授 (70197929)
|
研究分担者 |
松本 貴裕 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (10422742)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | リング共振器 / 速い光 / 遅い光 / 分散 / 因果律 / GHシフト |
研究実績の概要 |
1.直列配置リング共振器のなかでのガウスパルスピークの発展 負の速度は、パルスのピークが入射するよりも早く、出射パルスのピークが出力に現れるという奇妙な効果である。一見すると因果律と矛盾するようにみえ、関心を集めている。この特異な振る舞いから導かれる1つの疑問は、ガウス型パルスの先頭部分が媒質に入射した後、入射ピークが媒質に入射するよりも早く入射パルスが“遮断”された場合、出射パルスのピークは現れるか、という疑問である。本研究では、直列配置された共振器列の高い異常分散を利用して、ピークを持たないガウスパルスを用いて出射パルスピークの観測する実証実験をおこなった。多段配列されたリング共振器の各段を通過する波形を系統的に観測し、ピークが成長する様子を実験的に捕らえた。このことは、入射と出射パルスのピークはお互いに解析的に(因果律で)結ばれておらず、周波数分散によって引き起こされた位相シフトによりパルスの異なった部位から形成されるものであることを端的に示している。この研究をさらに発展させ、「遅い光」の場合には、パルスのピークよりも後でパルスが遮断されているにもかかわらず、伝播中にパルスピークが消滅していくことを多段リング共振器の各段を通過する波形を観測することで系統的に捕らえた。
2.A.Net and reshaping Goos-Hanchen (GH) Shift GHシフトは、「空間領域」での分散による波束の断面方向への移動であり、時間領域の群速度と対応がつくものである。この時、高次の分散の影響でビームプロファイルが大きく広がる、あるいは、変形することが起こる。時間領域で確立してきたNet遅延、Reshaping遅延の概念を拡張し、Net GH シフト、Reshaping GH シフトの概念によって高次の分散が問題となる系でのGHシフトを記述する方法を提案した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、研究実績の概要に記載した 1.直列配置リング共振器のなかでのガウスパルスピークの発展 2.A.Net and reshaping Goos-Hanchen (GH) Shift について、おおむね計画に従って研究を展開できた。特に、1 については 研究をさらに発展させ、研究計画にはなかった「遅い光」の伝播の様子も解析することができ、研究は順調に進んでいるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度の研究において、多段結合リング共振器において、出射パルスピークが形成されていく過程を連続的に捉えることに成功した。令和3年度の研究においては、 研究代表者が開発した“逆”CRIT構造に現れる制御性の高い異常分散を用いて、ピークを持たないガウスパルスを入射させ、“減衰しない”出射パルスピークを観測するという実験を試みる。通常のCRITが強い吸収領域に干渉によって透明領域を作り出すのに対して、“逆”CRIT構造では“増幅”領域に干渉によって透明領域を作り出す。逆CRIT構造のなかでは、パルスは増幅も、減衰もなく、負の群速度遅延を持って伝播するため、パルスのピークに関わる現象をより明確に示すことができるであろう。また、逆結合共振器誘導透明化構造からAuster-Towns型への遷移についても観測したい。 これらの実験と平行して、通常、分散を作りだすことのできる共鳴構造は、Kramous-Kronichの関係式から必然的に吸収や増幅を伴っているが、まったく平坦なスペクトル構造においても分散を持つ場合があることを実験的に示し、遅い光を観測することを試みる。
|