研究課題/領域番号 |
18H01151
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石原 一 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60273611)
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研究分担者 |
芦田 昌明 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60240818)
余越 伸彦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90409681)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超蛍光 / 同期現象 / コヒーレント発光 / 光アンテナ / 上方波長変換 |
研究実績の概要 |
30年度は、局在表面プラズモンが増強電場を形成する場に存在する分子発光体集合系の協力発光の金属構造依存性を集中的に調べ、今後の実験的研究のためのデータ収集に努めた。金属構造体は任意形状のものを扱うため、グループで開発した超蛍光理論において、Green関数を任意の環境形状において計算出来る手法を新たに開発し、これを用いて、金属ナノギャップに存在する分子集合体の超蛍光を計算出来るようにした。 特に重点的に調べたことはナノギャップ内での発光分子の配置依存性、また十分離れたナノギャップに配置された発光分子の相関効果であるが、結論として、配置が規則的であるか否かには超蛍光の発現に無視できない影響が現れ、また金属の構造によっては十分離れたナノギャップに存在する発光分子間にも強い相関が現れることなどが明らかになった。 以上の計算において、重要な結果は、どの場合においても金属の存在による相関効果の増強が極めて強いことである。この結果の実験検証については次年度からの実験的研究の重要なターゲットとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
任意形状の金属構造などが存在する場合の超蛍光についてはこれまで計算手法がなかったが、30年度、Green関数を離散双極子法で数値的に計算することによりこれを可能にしたことは計画通りの進展である。一方、この計算手法を用いて明らかにした効果として、金属による電場増強効果が数千から数万倍と予想より大きかったことは、計算を行って初めて明らかになっており、この効果については想定以上のものであった。また、空間的に離れた場所にある発光分子が、接する金属構造を共通にする場合に強い相関を示すことが明らかになった点は狙い通りの成果と言える。一方で、分子の配置がキラリティーを持つ場合に、金属構造のキラリティーと強い相関を持った超蛍光が現れることが明らかになった。これはキラル選択的超蛍光の発現であり、世界的にも認識されていない物理的効果と思われる。以上を総合すると、本年度は計画以上に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
理論的は昨年度明らかになったキラル選択的超蛍光の発現についてさらに明らかにするとともに、実験的には初年度に明らかになった発光分子集合系の超蛍光について明らかにしていく。具体的には次の項目を考えている。 「金属光アンテナと分子の結合系の試作を行い、金属構造のエネルギー透過現象を確認」北大電子研グループ提供の金属ナノ構造による光アンテナを用いて、全系の吸収、及び分子の励起スペクトルを同時に観測することによりFano的なエネルギー透過現象を確認する。 「ZnOミクロン真球による超発光分子作成」ZnOミクロン真球に集束イオンビーム装置(FIB)を用いて、空間分解能10nm程度で酸素欠陥が存在する領域の規則的なパターンとその分布を制御し、発光中心(酸素欠陥)の配置が制御された人工的な超発光分子を作製する。 「NV-センターを含むナノダイヤの超蛍光」数100個のNV-センターを含むナノダイヤを金属アンテナに捕捉し、局在プラズモンによる超蛍光の増強効果を調べる。
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