研究課題/領域番号 |
18H01152
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北川 勝浩 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20252629)
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研究分担者 |
香川 晃徳 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (70533701)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 量子シミュレーション / スピン / 磁気共鳴 / 高偏極 / 動的核偏極 |
研究実績の概要 |
本研究では、固体物質中の超低エントロピーな大規模核スピン多体系、電子スピン多体系を精密に制御することにより、磁気相転移の量子シミュレータを開発することを目的としいる。 本年度は、核スピン系については高偏極化(超低エントロピー化)について実験を行った。1K以下の極低温下での超低エントロピー化はフッ化カルシウムにツリウムをドープしたサンプルを用いて行った。実験装置の改良を行い、核スピン偏極を80%以上に増大させることに成功した。回転座標系での核スピン格子緩和時間は、数ミリ秒であったため、これを長くする必要があることが分かった。また室温での超低エントロピー化をp-ターフェニルにペンタセンをドープしたサンプルを用いて行った。スピン格子緩和が長くするために、これまでより高い0.6Tの実験を行ったが、0.4Tと同程度の30%程度であった。磁気相転移を実現するために必要な超低エントロピー化を行うには、室温下での高偏極化については実験条件の最適化が必要である。 電子スピン系の超低エントロピー化は、希釈冷凍機でサンプルを100mK程度に冷却することで達成できる。そのような極低温下で実験を行うための共振器開発を行った。またそのような極低温下ではサンプル以外の微量に含まれる電子スピンを観測されてしまう。実験装置に用いる素材を変更し、バックグラウンド信号の抑制に成功した。また核磁気共鳴で用いられているパルスシーケンスを任意波形発振器で実現し、電子スピンの精密な制御に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
超低エントロピー化実験のために必要なレーザーが故障したため、やや計画が遅れている。また電子スピン精密操作に必要な高性能な任意波形発振器も同様に故障したため、実験がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
核スピン系では電子スピンの光励起三重項状態を用いた室温での高偏極化と極低温下での熱平衡状態を用いた二つの高偏極化実験を行う。昨年度に引き続き、それぞれ実験装置を改良し、磁気相転移のためにさらなる高偏極化を目指す。試料中の電子スピン濃度に対する核スピンの回転座標系でのスピン格子緩和を測定する。またラジオ波の照射強度や周波数掃引速度を変えながらADRF(回転座標系での断熱消磁)に最適な断熱条件を実験的に決定し、磁気相転移の実現を目指す。 希釈冷凍機を用いて試料を100mK程度に冷却することで電子スピンを高偏極化し、電子スピン系でのADRFを用いた磁気相転移を実現する。前年度は電子スピンへの強磁場照射が可能な共振器の開発や精密操作の研究を行ったが、任意波形発振器の故障により、計画に遅れが生じため、本年度もまずそれらを引き続き行う。試料作製についても引き続き行う。それらが完了した後、希釈冷凍機を用いて100mK下で磁気相転移実験を試みる。
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