研究課題
通常のバルク体では強誘電性を示さないチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)や酸化ハフニウム(HfO2)をナノスケール薄膜にすると強誘電性が出現する。なぜ強誘電性が現れるのか?ナノ薄膜のX線解析は格子長を測定するのが限界で、リートベルト法による精密な原子位置決定ができないため、自発分極(陽・陰イオンの重心のずれ)の発現機構はわかっていない。本研究では、薄膜に対する感度を高め同時にエネルギー分解能を向上させた蛍光X線検出X線分光法(高分解能XAS法)を用いることで、薄膜固有の格子歪みを元素選択的に調べ、酸化物薄膜に現れる新規強誘電性の発現機構の解明を目指してきた。研究3年目の最終年度は、高分解能XAS法に加えて、時間分解型XAS法による電子状態の動的な異方性を効果的に検出する手法に取り組んだ。チタン酸バリウム薄膜に電場を印加することで、誘電体材料として実用に供されているこの物質の電子状態が物質機能をどのように発現しているのかを解明した。一般に放射光X線を用いた分光研究における時間分解測定は、ナノ秒程度の非常に短い時間応答を捉えることが専らであるが、筆者らは半導体X線検出器の信号処理回路が持つ数百ナノ秒程度の比較的ゆっくりとした応答を効果的かつ簡便に捉えることに成功した。特に重要な知見として、チタン酸バリウムにおいて、Aサイトイオンであるバリウムイオンがチタンイオンとの静電的相互作用によって、自発分極などの誘電特性に電子状態を介して影響を及ぼしていることが明らかになった点である。これらの結果は、高インパクト誌に発表するとともに、共同研究者も含めた各所属機関における報道発表を行い、国内外を通じて情報発信した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
共同研究者の所属機関(東京工業大学、静岡大学、高エネルギー加速器研究機構)で同時に発表を行った。加えて、EurekAlert!、Asia Research News、AlphaGalileoで英語による情報発信も行った
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) 備考 (1件)
Acta Materialia
巻: 207 ページ: 116681~116681
10.1016/j.actamat.2021.116681
Journal of Physics: Condensed Matter
巻: 32 ページ: 355503~355503
10.1088/1361-648X/ab8cdd
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/63393